劇場公開日 2016年10月1日

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「ゴギブリとドブネズミ、以下の「美学」」SCOOP! ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ゴギブリとドブネズミ、以下の「美学」

2016年11月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

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萌える

「福山がスキャンダルな役をやるらしい」と言う印象しかなかった本作。
当初観る予定もなかった。
しかし監督の名前を知って観てみようと思った。
「モテキ」「バクマン。」を撮った大根仁氏である。
それほどまでに、この二つの作品は抜群に”面白カッタ”のだ。
本作では福山雅治が、ダーティーでワイルドな「中年パパラッチ」を演じる。
その意外性と、テンポの良いストーリーに引き込まれる作品に仕上がっている。
福山演じる主人公「都城静」は、芸能人、タレントなど有名人を盗撮するのが仕事だ。
かつては出版社に勤めていたが、今はフリーでやっている。
組織の”しがらみ”から外れた、まさにアウトローであり、一匹狼。
彼の車はベンツのゲレンデワーゲンである。
車だと軽く1000万を超える車だ。
「結構儲けてやがるなぁ~」と思っていたら、実は中古で買っていたのだ。
フリーカメラマンの暮らしは楽じゃない。
彼の場合、一般ピープルが、覗き見したくなるような、著名人を狙う。
夜の闇に紛れ、獲物の行方をどこまでも付け狙い、追いかける。
その姿はまさにハイエナである。
やがて彼のカメラが決定的瞬間をゲットする。
「カシャッ、パシャッパシャッ!!」
次に彼がとる行動はただ1つ。
逃げて逃げて逃げまくるのだ。
「獲物達」は反撃してくる場合があるのだ。そういう危機的な状況に陥った都城を助けてくれる、変なおじさんがいる。
名前を「チャラ源」という。
この闇夜の時空間に、ふわふわ漂っている「クラゲのような」得体の知れない人物を、演じられるのはこの人。
リリー・フランキーだけであろう。
このキャスティングは大正解。この人の演技にはいつも驚かされる。
本作でもかなり衝撃的なシーンがあるのでお見逃しなく。
さてこういう、ヤサグレた”汚ッたねぇ~”現場に配属されてきたのが、二階堂ふみ演じる”ウブな”新人女性記者「行川野火」
写真週刊誌の「イロハ」も、まるでわからない”ど素人”だ。
「なんでこんな奴と組ませるんだよ!」と都城静は、やり手女性編集者(吉田羊)に悪態をつくのだが…。
彼は、この”ど素人”女性記者を車に乗せ、今日も獲物を求め、夜の街に紛れ込んでゆく。
彼の仕事の99%は「待つこと」に費やされる。
24時間、狙った獲物を待ち続けても、23時間59分、何も起こらないのが当たり前なのだ。
しかしこの道のプロ、都城静は、その「残りの1分」「シャッターチャンス」に全てを賭ける。
そうやって彼は有名人達のアラレもない、恥ずかしい姿を「SCOOP!」として次々、モノにしてきた。
彼の写真を「商品」にし「現ナマ」に変えるのは写真週刊誌だ。
編集部では、毎号、発売部数がホワイトボードに表示される。
都城静と行川野火のチームは、どんどんスクープをモノにしていく。
刺激的な写真を撮れば撮るほど、発行部数は右肩上がりで、増えてゆく。
まさに「イケイケドンドン」
その発行部数の伸びを横目に見ながら、都城静は、ぼそっと野火につぶやく。
「俺たちがやってる事は、しょせん、ゴキブリか、ドブねずみ以下さ」
しかし、ゴキブリだって、ドブネズミだって、なりたくてその姿に生まれついたのではない。
彼らにも彼らなりの美学があってもいいではないか?
今日も彼らは真夜中の闇に紛れ、こそこそと街の片隅に自らの姿を潜める。
「SCOOP! を撮る」
ただそれだけに、全てを賭ける、彼らの生き様。
ラストシーン。漆黒の夜空。
ぽっかり浮かぶ満月。
月はどんな表情で彼らを観ているのだろうか?

ユキト@アマミヤ