「華麗で切ない本格的恋愛ファンタジー」美女と野獣 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
華麗で切ない本格的恋愛ファンタジー
本作は、アメリカ映画の良さが遺憾なく発揮された傑作である。本作はミュージカル仕立てのファンタジーであり、アメリカ映画の最も得意とするジャンルの作品である。
物語の舞台は中世のフランス。我儘の限りを尽くしていた傍若無人な城の王子は、美しい魔女の怒りを買い、野獣(ダン・スティーヴァンス)に変えられてしまう。臣下たちも家具に変えられてしまう。魔女が持ち込んだバラの花が枯れるまでに、王子が真実の愛を見つけなければ、魔法は永遠に解けない。一方、城のある村に住む美しい娘ベル(エマ・ワトソン)は、その進歩的考え方故に村人から異端視され、孤立していた。ふとした切欠で二人は出会うが、最初は全く嚙み合わなかった二人だったが、読書という共通の趣味によって、次第に二人は理解し、惹かれ合うようになり、真実の愛が成就するかに思われたが、二人の前には試練が待ち受けていた・・・。
本作の最大のポイントは、ベルが野獣に惹かれるプロセスである。不自然なプロセスでは、ラブストーリーとして破綻してしまうが、そこは抜かりない。ベルを知的好奇心の強い性格にしたことが奏功している。ベルは固定観念を持たずに野獣に近づき、彼の知性、内面に惹かれていく。読書を通した知的な会話の深まりが自然で、内面に惹かれるということを納得させてくれる。
また、本作は、本格的ミュージカルなので歌唱シーンが多く、ストーリー展開が遅くなる感は否めないが、そのどれもが、力感に溢れ、美しい歌声と意味深い歌詞が心に染み渡る。やはり、ミュージカルはアメリカ映画の得意技であることを再認識させられた。
本作のファンタジーとしての真骨頂は、城でのベルの一人だけの晩餐会を盛り上げる魔法に掛けられた臣下達の躍動シーンであり、CG技術を駆使した展開が素晴らしい。不思議の国のアリス、スターウォーズなどを彷彿とさせるが、魔法に掛けられ家具に身を窶しながらも王子を慕う臣下達の想いに胸が熱くなる。
進歩的なベルを異端視し、ベルの説得を振り切って、野獣の住む城を襲撃する村人たちの考え方、行動は、魔女狩りの名のもとに自分たちの理解できない者を排除してきた中世欧州社会そのものであり、リアルであり説得力がある。
ファンタージーであるので、予定調和となるだろうと分かってはいても、本当に魔法は解けるのだろうかというハラハラ・ドキドキ感が半端なく、ラストは涙が込み上げてきた。王子、臣下達の演技が抜群であり、人間の姿をしていない彼らが最も人間的であり、魔法を巡る彼らの葛藤に素直に感情移入ができた。
本作はラブストーリーではあるが、主人公二人に過度にフォーカスせず、魔法に掛けられた臣下達、ベルを異端視する村人達など、主人公二人を取り巻く登場人物達を丁寧に描写することで、物語のすそ野が広くなっており、しっかりとした土台を築いている。その結果、雄大・壮大さと、華麗な美しさを併せ持つ、観る者を魅了して止まない作品に仕上がっている。
いつもありがとうございます。
理路整然としたレビュー。
いつもながら博識と美しい文章に圧倒されます。
4年ぶりに観ました。
自立した主役のベル(エマ・ワトソン)が新鮮で良かったです。
みかずきさん(#^.^#)
ディズニー作品も良いですよね。
やはり、音楽の美しさが際立ちます。
>本作の最大のポイントは、
ベルが野獣に惹かれるプロセスで
固定観念を持たないベルが
野獣の内面を重要視する
知的な女性像がポイントですね。
野獣の図書館(蔵書部屋)シーン
印象的でした。
勿論、ダンスシーンも良かったですね。