「秀作ですが…少し残念」美女と野獣 こまじぇさんの映画レビュー(感想・評価)
秀作ですが…少し残念
IMAX3D・字幕版と2D・吹き替え版を観ました。
アニメ映画として史上初のアカデミー作品賞候補、同時に3曲が主題歌賞候補、そして「美女と野獣」が受賞、ミュージカル化され記録的な大ヒットと作品の完成度の高さは実証済みだったので、余程の事が無い限り失敗はしない題材です。
アラン・メンケンによる「名曲」そして「名場面」がきちんと再現され、それだけでも感動ものです。特にオープニングの「朝の風景」「強いぞガストン」「ひとりぼっちの晩餐会」「美女と野獣・ダンスシーン」は映像ならでは華麗で素晴らしいの一言です。
中でも「晩餐会」と「ダンスシーン」は是非3Dで楽しむことをお薦めします。
魅力的なストーリーと素敵な音楽に支えられ、上出来の作品に仕上がっています。
しかし、作劇と言う点からは疑問に感じる部分があり、ある意味致命傷になっているとさえ感じています。
1.魔女の扱い方…最後のバラが落ち、呪いは解けることなく終わるのですが、なんと魔女が再び現れて呪いを解いてしまします。
これでは野獣が「愛し、愛されるなら呪いは解ける」という大前提がひっくり返ってしまいます。やはり原作?通り「I Love You」の言葉で呪いが解ける方が良かったと思います。
2.図書館の扱い方…特にミュージカル版で感動的であり、重要な場面でもある図書館をプレゼントするシーンが割愛され、あっさりと描かれています。後半の見せ場である徐々に心が通う始める流れにおいて、この図書館は非常に大切な存在だと思います。ミュージカルではこの図書館で二人が本を読むシーンが、名場面の一つとして数えられています。
3.野獣の素性の扱い方…クライマックスの名台詞である「僕だよ、ベル」「あなたなのね!」が本作ではありません。
それは事前のシーンで、ポット夫人により野獣の素性がベルに明かされているからです。これは本作品の本質的な部分に抵触する問題だとさえ感じます。王子とは知らずに野獣を愛したベル、という大前提が否定され、結果として前述の名台詞は出しようが無くなっています。これでは「野獣」と「王子」の眼が同じ、というネタ振りも効果的でなくなります。
この3点は強い言い方をすれば「改悪」とも言える変更だと思います。
華麗で流麗なカメラワーク、3つの新作も素晴らしい歌曲、大ヒットアニメの実写化としては十分な秀作だと思いますが、傑作にまでは至りません。
日本語吹替版…ポット夫人は(×)岩崎宏美の顔が浮かんでしまいます。個人的には濱田めぐみで聞きたかったです。
ベルは声質が全くあっていないと思います。ディズニーが良く許可したと不思議なくらいです。ビーストの山崎育三郎は合格点でしょう。脇役陣は問題ありません。新妻聖子とかいっそ濱田めぐみを起用した方が良かったのでは。吹替に関しては非常に不満の残る出来栄えでした。