「あらゆる「美女と野獣」の集大成は、アラン・メンケンの新曲に心打たれる」美女と野獣 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
あらゆる「美女と野獣」の集大成は、アラン・メンケンの新曲に心打たれる
アラン・メンケンの新曲だよ(泣)。ミュージカルファンとして初日を逃すわけにはいかない。レイトショーに駆け込んだのはいいが、興奮して眠れない。ダンスミュージカルと比べてはいけないが、旋律という意味では「ラ・ラ・ランド」が霞むほどの名曲揃いに改めて脱帽である。
しかも単なる実写版ではなく、なにもかもがアップデートされた本命である。3D-VFXの極みは、リアル俳優とCGキャラクターの共演という「ジャングル・ブック」(2016)の延長線上にある。しかし実写の野獣はアニメ版の可愛らしさを残していて、まったく怖くないが。
さらにアニメ版の84分と比べると、130分とかなり長尺になっているのは、舞台ミュージカル版の要素を取り込んだためで、あらゆる「美女と野獣」をベースに"完全版"を目指している。
主役のベルは「ハリー・ポッター」シリーズ(2001-2011)のハーマイオニー役のエマ・ワトソン。おそらく仏パリ生まれだからの起用と思われる。原作はフランスの民話だし、アメリカ人のフランス・コンプレックスは半端ないし…。副次的には、27歳の白人にして幼い顔立ちのエマは、ベルの設定年齢"15歳"を考えると実にハマり役であり、ロリキャラ好みの日本人ウケすること間違いない。
そして最も重要なのは、作曲のアラン・メンケンの復活である。「美女と野獣」のみならず「アラジン」(1992)や「リトル・マーメイド」(1989)などもアラン作品。名実ともにディズニーミュージカルの顔だが、67歳の御大は「塔の上のラプンツェル」(2011)が実質的な最後になっていて、あの「アナと雪の女王」(2014)ではロペス夫妻に取って代わられた。
そのアラン・メンケンの新曲が3曲もある。作詞がティム・ライスというのも泣ける。なかでも「ひそかな夢(Evermore)」だろう。野獣役のダン・スティーブンスが歌いあげるバラードだ。
ベルへの恋心が高まりながらも 、父親のもとにベルを帰した野獣の切ない想いがはじける。これまでの野獣には、切ない愛の歌がなかった! まるでアンドリュー・ロイド・ウェバー「オペラ座の怪人」の「ミュージック・オブ・ザ・ナイト(Music of the Night)」である。
また「時は永遠に(How Does A Moment Last Forever)」は、劇中ではエマ・ワトソンが、エンドロールではセリーヌ・ディオンが歌う。「デイズ・イン・ザ・サン~日差しをあびて~(Days in the Sun)」は、怪我をした野獣を手当てするベルの心が開かれていく瞬間。どれも四半世紀前の定番に勝るとも劣らない。新旧が見事に溶け込んでいる。代わりに、舞台版の「If I can’t Love Her(愛せぬならば)」がない・・・。
これは必ず3Dで観ましょうね。これだけの3D-SFX効果を駆使した作品をわざわざ2Dで観る意味が分からない。たぶん2Dで観ている人は、オープニングのバラの効果や、ベルとドレスに飾りつく金色の装飾のシーン、エンドロールの登場人物紹介シーンなどの3D効果を知らないでしょうね。
とりあえず字幕版を観たが、もちろん吹替版も重要。ATMOS版もある。また字幕版はシネスコだが、IMAX版は上下カットのないフルサイズIMAXらしいのでさらにもう一回観なければ。
(2017/4/21/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/字幕:松浦美奈)