劇場公開日 2016年8月11日

  • 予告編を見る

「人間だってウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」ジャングル・ブック 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人間だってウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル

2016年9月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

この前も主人公がジャングルを飛び回る映画を鑑賞した
ばかりなのだけど、予告を観る限りはよりファミリー
映画寄りに見えた『ジャングル・ブック』を鑑賞。

モーグリ役の少年以外は、動物はおろか植物も風景も
フルCGらしいが……いやいやCG技術もここまで来たか、
動物達も口が動く時以外はほとんどCGに見えないし、
植物や風景に関しては「わあすごいリアル~」とか
そんなレベルじゃなく、ホントに全く全然違和感が無い。
制作費もそれなりにかかっているようだが……凄いもんは凄い。
(Wikipedia情報だと制作費1.75億ドル!
 ちなみに世界興収は9.5億ドルの大ヒット)
.
.
.
映像的にもスゴいが、この映画で最も魅力的なのは
かわいらしくイキイキとしたキャラクター達だ。
種の違うモーグリに純粋な愛情を注ぐ母狼ラクシャ、
凶暴で憎たらしいが圧倒的に強い虎のシア・カーン 、
頼もしい教育係の黒豹バギーラ……
だけどやっぱり一番はクマのバルー!
怠け者だし高い所も苦手だけど、いざという時は勇猛。
歌上手だったり友人の為に嫌われ役を買って出たり、
心も体も大きくて優しいステキなキャラだった。

その他にも多種多様な生き物が登場する本作だが、
それら動物や世界観の描き方も(もう一方の
ジャングル映画よりずっと)個性的で鮮やかだ。
象の群れを“森の神”として扱ったり、心を惑わす大蛇
カー(スカヨハ良い声)やチンパンジー皇帝なども
未開のジャングルの神秘に満ちていて、いわゆる
センス・オブ・ワンダーを感じられる出来。

種の違いを越えた親子の絆や、“人間”としての自分
を確立しつつ、ジャングルの動物たちと共存する
力と心をも身に付けていくモーグリの成長もグッド。
人間も動物の一部なんだし、仲良くしなきゃね。
あるいは『ズートピア』同様、違いを認め合って
共存しようというメッセージも含んでいるのかも。
.
.
.
とまあ、ファミリー映画としては一定以上の出来だと
思うのだが、自分としては傑作・秀作と呼ぶほどまで
には好きになれなかったということも述べておく。

ものすごい皮肉なのだが、映像が技術的に凄いことは
重々承知だけど、あまりにCGがリアルすぎて、観てる内に
その凄さが印象に残らなくなってしまうのである。
それこそがCG技術が目指す所の究極かもしれないし、
映像技術のみを評価する方なら判定5.0でも足りない
くらいだろうが、僕の意見ではその技術はあくまで
観客を物語へ没入させるための一手法。

なので少なくとも僕にとっては、『映像スゲー』が
そのまま『この映画スゲー』という印象には直結
しなかったんである。
ちょうど、スーパーリアリズムの絵画を見て「描いた
人間の技術は素直に凄いけどそれは描き手の技術鍛練
以上の意味があるのかしら」と首を傾げる感覚に近いかも。

肝心の物語も、良くも悪くも王道だ。
安定した出来とは言えるが、飛び抜けた出来でもない。
食い止められたとはいえモーグリの終盤での過ちも
そうそう簡単に取り返せるものではないと感じ、
そこで高揚感に歯止めも掛かってしまったのもある。
.
.
.
もう一方のジャングル映画よりはずっと良かったけど……
僕はジャングルが舞台の映画と相性が悪いのかしら。
これだけの映像を見せてもらったのだから
観て損ナシの3.5判定でも良いのだけど、
申し訳ないが個人の直感的にはまあまあの3.0判定で。

<2016.08.20鑑賞>
.
.
.
.
余談:
クリストファー・ウォーケン、ビル・マーレイ、
スカーレット・ヨハンソン、みんな歌上手いねえ。

浮遊きびなご