「こんな激烈純愛映画、今時ある?」ロブスター ケンイチさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな激烈純愛映画、今時ある?
まずね、キャスティングが絶妙!
太ったコリン・ファレルとジョン・C・ライリーとベン・ウィショーの取り合わせ、この3ショットどれだけクセ強?もうこの時点で面白い映画確定です。
そして音楽も絶妙!
緊迫感と迫力のあるBGMはストーリーの展開とズレていたりして、異化効果を狙ってる?それに劇中実際に流れている音楽や効果音は巧みにピントをずらしていてギャグになってるじゃん。
それから、森の中になぜか猫がいたり、孔雀がいたり、ホテルのルール違反のペナルティになぜかトースターを使ったり、細かい所も絶妙にシュールで、そこに意味があるのかないのか…。
私ね、最初のうち監督は完全な独身主義者で、恋愛至上主義者を馬鹿にしているのかと思っていたんです。でも違いました。一目惚れから始まる激烈な純愛の映画でした。
夏目漱石は東京帝大で英文学の講師も務めており、"I love you."を「月が綺麗ですね」と翻訳したそうです。
この映画では、それが
「背中の手の届かない所に薬を塗りましょうか」
となるんです。
この映画を2巡目したとき、私はこのセリフで泣きそうになりましたよ。
この映画の一番美しいシーンじゃん!
調べたところヨルゴス・ランティモス監督は既婚者でしたよ。しかもお相手がこの映画に出ていました。独身者グループに内通する接客係役アリアード・ラベルさんが監督の奥様でした。
この映画、色々はぐらかしてますが、ベットベトの恋愛映画じゃないですか!
義務的な婚姻も独身主義も否定して、人の命よりもずっしり重い運命的な愛を高らかに主張する純粋極まりない愛情至上主義の映画じゃないですか!
ロブスターっていうのは長久の愛の象徴なのだと、私は解釈しましたよ。