「意思疎通の手段」映画 聲の形 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
意思疎通の手段
口語、文語、表情、身振り手振り、接触…。
その全てを駆使できる人。
幾つかの手段に限られる人。
一部の手段は苦手な人。
話したくても上手く話せない、聴こえない硝子。
周りからの信号を受信しないよう情報を遮断している高校生の将也。
学校は幾つになっても楽な場所ではなかったなぁと振り返ると、ほとんどの子供は幼い頃から、高密度な人間模様の世界に放り込まれる訳で、自分の意思をどう表現するか、相手の意思をどう汲み取るか、結構過酷なトレーニングの繰り返しだと思いました。
大人になっても誤解を生まないよう神経すり減らしますね。
石田家も西宮家も、お父さんの姿が見当たりませんでした。
原作に深い事情が記されているようですが。
現実においては、家庭内不和や虐待によるストレスの反動でいじめに走る子供もいるので、意思疎通の障害だけが原因とは限らないのかと。とにかく劇中の先生達のやり方はかなりマズイ。
川井さん系は、強者も足元からひっくり返せるタイプで一番恐ろしい(^_^;)。上手く立ち回って難を逃れて生きてこれたから、自分は善人だと心酔しているし大人になっても変わらない人が多い。だからと言って川井さんが酷い目に遭えば良いという話でもない。周りの嗅覚が研ぎ澄まされてくると、段々みんなこういう人には近寄らなくなる。
辛いけれど、痛みを経験して知ること、挫折感を味わうこと、自己の罪悪感に苛まれること、償うことは、より良い人間になるために必要なこと…。
顔にバッテンを付ける表現が良かったです。
石田ママの寛大さとブロッコリーみたいな永束君がナイスでした。西宮ママはいくらなんでも暴力が…。
登場人物がみんな同じ顔に見えるなんてこともなく、分かりやすかったです。ただ、随分小柄に描かれている結絃の年齢が、最後の方まで想像がつきませんでした。
漢字の苦手な自分は何故か聲をずっと蟹と読んでいました…。そんな失礼は許されないほど、人物描写が秀逸で非常によく出来た作品でした。
「君に 生きるのを手伝ってほしい」