「感動の拒絶」映画 聲の形 somebodyさんの映画レビュー(感想・評価)
感動の拒絶
レビュアーの状況
【原作未読】【公開初日に観てきました】
原作を読んでおらず、あまり事前情報も観ていなかった中で観てきました。
凄く不思議な映画でした。
感情移入で泣きそうになる瞬間は幾度もあるものの
全編を通して感動する観客を慎重に拒絶していました。
感動をしないけれど、各キャラクターに共感ができる。
やりきれない感情の発露としての怒り、涙に共感して泣きそうになる。とにかく目が離せない。離していたくない、という映画でした。
物語の流れとしては
各キャラクターの欠点、古傷を幾度となく掘り返し
お互い、そして自らすら傷つけ、すれ違い合いながら、
それでも自分の傷口と向き合い、失敗しながらその傷を受け入れていく(癒していく)話でした。
ただ作中の細やかな描写をしっかり追えないと
(そして各キャラクターの背景にある状況を推定できないと)
不快感を感じる描写の数々の割に感動がなく
かなりしんどいと思います。
それから、これは原作未読組の戯言なのですが
主人公とヒロインの転機のイベントの前の何か(決定的な)出来事
や
真柴君に関わるエピソードが意図的にカットされているようにも感じました。
無くても成立する話として仕上がっていると思うのですが
きっと入っていたら、もっと素敵だったんだろうな(原作読むか...。)
という気分になりました。
いい作品だと思います。
ただ、感動しようと思って観に行くべきではないですし
キレイで片づけられないことも多くあります。
(すれちがい、別離のキレイさを求めるなら「君の名は。」をお勧めします。)
また、映画の描写からどれだけのことを読み取れるかで
評価も変わってくると思います。
そういったことを踏まえて、観に行くべきか一度考えてから観にいかれることをお勧めします。