「ある程度の投資の知識は必須」マネー・ショート 華麗なる大逆転 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
ある程度の投資の知識は必須
私はよく映画レビュー語る時には「事前知識の有無」を言うんです。何故なら事前知識の有無は映画の評価に大きく関わると思うからです。ただし、この映画を語る場合は「投資の知識」についても語る必要があると思います。
株式投資などについての知識がないと分からない場面が多々あったので、それが分かるかどうかで面白さが変わると思います。実際、「難しくて分からない」というレビューも多く見掛けます。
私は3年前から投資を行っていてある程度投資の知識があると自負しておりましたが、それでも分かりにくい場面がいくつかありました。
でも、「分からない」で終わらせてしまうのは勿体ない魅力がこの映画にはあります。
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サブプライムローン問題を発端とするリーマンショックを予見し、アメリカ経済の破綻に賭けた4人の男たちの物語。住宅バブル崩壊を予見し、周りの反対を押し切りながらもCDS(クレジットデフォルトスワップ)によって一世一代の賭けに挑む。
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難しい金融用語やサブプライムローン問題に関する用語が特に説明も無くポンポン出てくるので、ある程度知識があることは前提になっています。日本以上にアメリカ本土での影響の大きい問題でしたので、アメリカのニュースとかで大きく取り上げられていたでしょうし、だからこその知識があること前提の構成なんだと思います。金融やリーマンショックに関する知識がある人なら良いのですが、知らない人からすると完全に置いてけぼりのストーリー構成です。
「CDS(クレジットデフォルトスワップ)」とか「モーゲージ」とか「サブプライムローン」とか、「S&P(実在する会社名)」「ムーディーズ(実在する会社名)」「ゴールドマンサックス(実在する会社名)」とか、何の説明も無くポンポン出てきます。企業名に関してはアメリカでは有名な超大手企業なので知っている人も多いでしょうが、投資用語に関しては大抵の人は分からないんじゃないかと・・・。一応申し訳程度に解説が挟まりますが、イマイチ分かりづらい例え話で説明されるので、やっぱりある程度の事前知識が無いと完全には理解できません。
また、「華麗なる大逆転」とかいう日本映画界の悪習ともいえる糞みたいな副題を付けてしまったせいで、「爽快な一発逆転劇」をイメージして鑑賞してしまった人からは概ね不評なのがレビュー見れば伝わってきます。世紀の空売りによって大博打を仕掛けた4人の登場人物たちですが、彼ら博打に勝つことはつまりアメリカ経済の破綻を意味します。自分たちが大金を手に入れたとしても心から喜べない社会状況なので、大逆転による爽快感は一切感じられません。そこがこの作品の魅力であると私個人は思っていますが、「華麗なる大逆転」を期待していた人にとっては「期待はずれ」と言わざるを得ないでしょう。
リーマンショックのあらましを理解した上で観ると本当に面白いので、面倒かもしれませんがリーマンショックについて軽く調べてから鑑賞することをオススメします。絶対に値下がりしない安全な投資先として誰もが疑わなかったアメリカの土地信仰・顧客を食い物にして私腹を肥やしていた悪徳銀行員たち・競合他社に仕事を奪われまいと本来の機能を失い形骸化した格付け会社。アメリカ経済の破綻を予見し、アメリカ金融界の闇と戦った熱い男たちの物語です。