人生タクシーのレビュー・感想・評価
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ルールや制約にとらわれない自由な精神が生んだ快作
ジャファル・パナヒ監督その人がタクシーを運転している。理由は語られない。カメラはダッシュボード上の回転式の台に設置されていて、監督が自ら向きを変え、車の前方の道路を映したり、後部座席の乗り合いの客をとらえたり、“自撮り”したり。乗客が「あなたパナヒ監督ですね!」と気づくドキュメンタリー風のやり取りもあるが、さまざまなハプニングが続発するので、台本はあるのだろう。しかし乗客たちの会話は作為を感じさせず、ひょっとしたら俳優ではない一般人もまじっているのではと思わせる。一応はフェイクドキュメンタリーの範疇に入るのだろうが、ジャンルに収まらない魅力にあふれている。
イラン政府に批判的な姿勢のせいで、映画監督禁止令を受けているが、「これは映画ではない」と題した作品を作ったり。スケールの大きなユーモア、制約や圧力をものともせず微笑でメッセージを発信し続ける姿勢に心を動かされる。
地元で映画を撮り続ける覚悟と本気。
政府に映画製作を禁止され、軟禁状態と伝えられたパナヒが、映画を作れないもどかしさを自宅の中だけで映画にしてしまった『これは映画ではない』にも驚いたが、そのままパナヒは軟禁以降3本目の作品までものにしてしまった。
明らかにイラン国外で上映されている以上、パナヒが投獄されたりしないだろうかと心配になるが、作中のパナヒはどこか吹っ切れたように飄々としている。
気がつけばマフマルバフ一家も故キアロスタミもバフマン・ゴバディも、イランの名監督の大半はイランを離れてしまい、創作にとっていい環境でないことは確かだろう。ただしパナヒは軟禁以前にあくまでもイランで映画を作ることにこだわっているのだと、ゴバディがどこかで発言していた。
この素晴らしい映画を観て、制約がある方が名作ができるなんて訳知り顔で言うことはできない。ただパナヒの創作欲が旺盛であり、元気にしているらしいことを喜びたいと思う。
金魚と薔薇
2023年7月9日
映画 #人生タクシー (2015年)鑑賞
政府から活動を禁じられたイランの #ジャファル・パナヒ 監督が、タクシーのダッシュボードにカメラを置き、自ら運転し、乗ってきた乗客たちの様子から人々の人生模様をドキュメンタリータッチに描く
姪っ子がよく喋る喋る
カンヌで金熊賞
【イラン政府により、映画監督20年禁止令を受けた男の、映画愛、政府に対する想いをドキュメンタリータッチで描いた作品。】
ー 私が、ジャファール・パナヒ監督作を映画館で観たのは、2018年に制作された「ある女優の不在」であった。
何処か、彼の師である、アッバス・キアロスミタ監督の”くねくね道”を想起させる面白き映画であった。
彼の師は、イラン政府の検閲を微妙にすり抜け、見事な諸作品「桜桃の味」を筆頭にした作品を世に出して来た。
だが、ジャファール・パナヒ監督は、幾つかの作品で、政府に目を付けられ、映画監督としては致命的な映画監督20年禁止令を受けてしまった。
それでも、彼は、様々な手法で映画を世に出している。ー
◆感想
・まずは、自国の映画を世に出さない姿勢を取った時点で、その国の文化度は、容易に分かると私は思う。文化を否定する国に未来は無いと思う。
・それでも、それに屈せずに、映画を世に出し続ける監督の姿勢に敬意を表する。
・今作は、監督自身がタクシー運転手として様々な自国民を載せて、街中を走る。
ー タクシー運転手とは、過酷な家業だと思う。どこの誰かもしれない人を乗せて目的地まで走るのである。色々な客が居るであろうに。
今作では、監督自身がイランの様々な人々を乗せる事で、イラン情勢が語られている。
<ラストのテロップが痛烈である。
この作品は政府の検閲を受け、国内では上映されなかった。
だが、国際的にはこの作品は多大なる評価をされたのである。
ジャファール・パナヒ監督の最新作を映画館で、早く観たいモノである。>
アホらしさが欲しかった
タクシーを走らせながら、次々入れ替わる乗客とのやり取りを実時間の一連の流れで見せる。深読みすればなんかあるんだろうし、ユーモラスなやり取り自体の面白さはある。
一種の試作というか、一アイデアの試み。それは、とても素晴らしいことなのだけれど、
客(役者)の入れ替わりがタイトで、タクシーらしい「暇な間」がないのが、なんとなく残念だったかな。ボンネットでタバコ(向こうはダメ?)ふかすぐらいの、アホらしさが欲しかったな。
気のいいおじさん風にしか見えないが
劇場で見逃していたので、観られてよかったのだが、こんなものまでソフト化されるなんて、すごいなあ。
ドキュメンタリー風で乗客が入れ替わっていくのが、オムニバスみたいになっていて、面白い。
ハナちゃん、かわいいね。
イランのお国事情が垣間見えるフェイクドキュメンタリー
ジャファル・パナヒ監督のことやイランの娯楽規制などのティーチインでもないと分かりにくい感じはある、なじみが無さすぎるので。
明らかにフェイクだと分かるが、企画としてではなく規制が厳しくてこういう風にしか撮れないという事情が分かると見方が変わる。
おしゃまな姪っ子が可愛い。
メルシーっていうのはなぜ?
通貨がリアルじゃなくてトマンていうてる。
とてもおしゃべり。規制が厳しいようでユルい。
乗り合いタクシーは日本以外では一般的なのかも
イランのドキュメンタリータッチってことで、もっと悲壮感あふれる作品...
イランのドキュメンタリータッチってことで、もっと悲壮感あふれる作品かと思いきや、軽くて楽しめるものだった。構えることなくたくさんの人に観てもらいたいって気持ちが伝わる。
ドキュメンタリータッチと言ってもドキュメンタリーでは無いなとすぐ分かるけども。でも実際あり得ることばかりなんだろうな。
それにしてもみんな適当で自由で羨ましい。日本てちゃんとし過ぎだよね。問題は山積みだろうけど、信じるものがあって闘うものがあって、今の日本と比べてどっちが生き物として幸せなんだろ。
正直すごく遠い国の話
なんだろう文化の違いはあれど
危ないって言われてる国の人たちが
ふつうに花を買ってタクシーに乗って
友人と話をしている。
正直驚きでしたが、一度は見て良い映画でした。
テヘラン都会ですね!行ってみたいかも!
試みが面白い
でも価値観の違いで驚くことが多くて、作品そのもの、お話に引き込まれるとかではなかったのがマイナスの部分。
大体タクシーが乗合いっていうのもスゴいね。
法の下の平等や、義務教育、言論の自由って素晴らしいんだなって改めて感じました。
映画人の本気を見たように思います
運転手役の監督と乗客のやり取りを通して、テヘラン市民の何気ない日常を見せつつ、厳しい言論統制が市民生活にまで及んでいる様子をしっかり見せてくれました。タクシー車内をロケ場所に選んでみせるとは監督の手法は天才的! 日本では殆ど知られていないイランの様子が良く分かりました。それにしても車窓から見えるテヘランの街並みは欧米の都市と遜色なくとても近代的でした。イランはイスラム教の国々の中でも最も近代化に成功した国と聞いていましたが納得。
監督のユーモアに乗る
イランのこともジャファル・パナヒ監督のことも全く知らなかったのだけど、とてもよい作品に出会えたと思う。
イランでは自由な発言や表現ができないことを小さな子どもまでがわかっているという、一見すると住みづらそうな世界かと思いきや、映画に描かれる空気には閉塞感がなく、登場人物はみんな生き生きしていた。
映画を観ている間はずっと、役者の演技が演出なのかドキュメンタリーなのか本当にわからないほど。役者の演技のうまさと演出のうまさで巧みにつくられた"イランの普通の人々"がよりこの映画の本質をみせてくれたのだと思う。
タクシーという制限された空間といくつかの小さな定点カメラのカメラワークにもかかわらず、こんなにも豊かな物語を描ける監督の手腕に始終ワクワクしていた。
ジャファル・パナヒ監督の視点とユーモアはすごい。
色んな人々の人生を乗せるタクシーでした。
イランのジャファル・パナヒ監督が、イランのタクシー乗客の様子から、テヘランで暮らす人々の人生模様を描いた作品。2015年の第65回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。
初めてのイラン映画!どんなものかと思ったんですが、監督が世界的にも評価の高いジャファル・パナヒ監督と言う事もあって、特に違和感も感じませんでした。もっとも、パナヒ監督は、反体制的な活動を理由に映画監督としての活動を禁じられているらしいんですけどね。本編が始まる前、延々と、そう言う内容のよくわからない映像が流れていたのは、パナヒ監督への敬意を表したものなのかな?正直、あの本編前の映像は、冗長で、耐え難かった。本編は良かったのにね。
編集されているので、どのくらいの時間、撮影していたのかわかりませんが、ぱっと見は一日の活動を編集したものっぽい様ですがが・・・。一日にしては、色んな出来事が起きすぎなんですよねぇ(笑)。最初に乗せた客が、実は強盗だったり、何人目かの客が、人目を憚る海賊版レンタルビデオ業者だったり、交通事故に遭った夫婦だったり・・・、色んな事が起きすぎです。イランの人々の生活を、本当に飾ることなく垣間見る事が出来た感じです。
結局この作品は、イランでは上映禁止だったそうです。正面から政府批判をした映像はありませんでしたが、市井の人の本音を国中にばらまきたくなかったと言う事なんでしょうね。
ちなみに原題は『TAXI』ですが、有名なリュック・ベッソン監督の同名の作品とは全く関係ありません。中身も、全然違います。邦題の『人生タクシー』と言うのは、悪くは無いのかも。
●追い詰められた末のしなやかさ。
世界は広い。イランの縮図。日常をしなやかに描く手腕に脱帽。シンプルだ。
一見すると日本と変わらない日常風景。だが、その裏側はまったく事情が違う。
政府の見えない手が見え隠れ。欧米と変わらないでしょと。
それでも、人の口に戸は立てられぬ。
映像がメッセージとなり、ひとりひとりが疑問を持ち、そして世界は動くのだ。政府は批判してないでしょと。
映画制作を20年禁止されても、拘留されても、アイデンティティーを失わない。
その朗らかな表情の下に、凄まじい信念を感じる。
映画監督禁止命令?
表現の自由って、誰のため?何のため?公の秩序維持って、為政者自身を守るため。
正式には、どう呼ばれるのか知らないが、映画監督禁止命令という珍妙なことが行われ、それへの反抗として制作されたとおぼしき本作品。内容は軽妙なタッチながら、手法が意表をついていてオシャレ。
テヘラン
この映画は イランの政治社会情勢を理解していないと全く理解不能な映画かと思います
ある意味 日本ではそれが分かっていないので ?といった映画になってしまっているかと。
アメリカ映画を見るのが普通と思ってませんか?イランでは全く無理です
アメリカ音楽も普通に聴けません どちらも違法なんです
どちらも聴く見るは イランでは闇で購入するしかなく だから タクシー内で取り引きしているんです 私がテヘランに住んでいた25年前もDVDではなく アタッシュケースに入ったビデオをレンタルで 音楽はドバイで買いお腹に隠して密輸。今はコンパクトになったなーと感心
スポーツ観戦も男性の競技を女性は見ることが出来ません
日本にいたらあり得ない事ばかりです
それらを踏まえて見ると(もっと言いたいことはありますが) 今 自分のいる境遇を幸せかと思い この映画を楽しめるかと思います
上映ができることの大切さ
タクシーに乗った色々な客の表情によって、その人の生き方の一片を垣間見せてくれるそんな映画かなぁと思っていたら、少し予想が外れた。
後半は、監督と姪との会話によって進行していく。姪の声が高音で耳障りというか五月蠅かったが、イランではどうやら「上映可能な映画」というのは色んな条件があるという。映画監督なったとはいえ、自分の作品が上映が出来ない作品もあることは勿体なく思った。遺言として欲しがっていた女性にフィルムは渡してくれたのかなぁ。
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