「反体制を滲ませた作風でイランでの20年間映画製作を禁じられているジ...」人生タクシー よねさんの映画レビュー(感想・評価)
反体制を滲ませた作風でイランでの20年間映画製作を禁じられているジ...
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反体制を滲ませた作風でイランでの20年間映画製作を禁じられているジャファル・パナヒ監督の新作。撮影機材は車載カメラと姪っ子のコンパクトデジカメのみ。タクシー運転手となった監督が街中で車を流しながら出会う人々を拾い、会話するだけ。口の達者な男とさらに輪をかけて口の達者な女性教師、胡散臭い海賊版DVD販売業者、交通事故に遭った夫婦、映画監督志望の学生、金魚鉢を抱えた2人の老婆、強盗に襲われた古い友人、お金持ちが落としたお金を拾った少年、停職中の女性弁護士等々、市井の人々が語る日常に切り取られたイランの国情が車載カメラに映りこんだ街の風景の向こう側にくっきりと浮かび上がる。
温厚な風貌の監督が時折見せる寂しげでありながら怒りを湛えた表情が、劇中に何度も言及される”俗悪なリアリズム”が何たるかを無言で語る作品。最後にポンと無造作に放り込まれるオチが胸につき刺さります。小学生なのに監督がタジタジになるような質問をバンバンぶつけてくる姪っ子のハナちゃんを筆頭に、理性的で信心深くタフな女性達の凛とした姿も印象的です。
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