ボーダーライン(2015)のレビュー・感想・評価
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法と正義と秩序
終始飽きないけどもう少し深い何かが欲しい。
こうゆう淡々と進む映画は好きです。
この手のドキュメンタリーな映画に、最初と最後とで大きなストーリーの変化を求めちゃいけないのですが、どうしても何かひとつひねりが欲しいと思うのは贅沢なのかなぁ…なインプレッションです。
でもお金を払っただけの満足感はありますよ。
怖い麻薬カルテル。
メキシコとアメリカの麻薬に関する闇は底知れない。
FBIのケイト(エミリー・ブラント)は、麻薬カルテルの捜査に加わることになる。
作戦の指揮をとるマット(ジョシュ・ブローリン)のやり方に、まったく納得できないケイト。そしてついに決定的な亀裂が。
麻薬カルテルの実態は、まだ、平和な日本にあっては、ほとんどわからないに等しいし、海に囲まれている日本とかの国とでは、根本的に事情が異なる。
ただ普通にやってたんでは、いくらでも隙をつかれて向こうのやりたい放題になることは容易に想像がつく。
本作はアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)の復讐に、渡りに船とCIAが手を貸すというありえない構図となっていて、それ自体が驚きである。
ドゥニ・ビルヌーブはできる監督であることを、本作でも証明してみせた。僕が観た3本の作品はどれも遜色なく、画面に漲る緊迫感は尋常ではない。
それに加えてロジャー・ディーキンスのカメラが相乗効果を生んでいる。
このコンビの「ブレードランナー」の続編の公開が前倒しになったのは賞狙いのためときく。ついにロジャー・ディーキンス戴冠の時か。
致命的なまでに「緊迫感」が無いのが…
兎にも角にも「緊迫感の無さ」が最後まで気になった一本。
ネタ的にもっと「焼け付くようなヒリヒリとしたモノ」を期待して行ったのだが、蓋をあければ間抜けなオネエチャンが主役でやけに牧歌的な印象だったのが残念だった。
煮え切らない度ではこちらも中々だが、「悪の法則」の描写のほうがずいぶんと良い。
監督が監督だけに、単純な仁義無き報復とドンパチばかりを期待したわけではないのだけれども。
主人公の”お飾り”感は、現実はどうあれ映画にするなら要らなかったな。
自分だったら主人公の黒人部下を仲間に入れるし、もうちょっと骨太な描写にしてこんな学芸会みたいな話運びにはしない、観たくないし。
ともあれ南米マフィアは恐ろしく、自己主張が強すぎ作戦を引っ掻き回す馬鹿がいるのも事実だということを伝える作品。
監督、こんな凡打を撮る人じゃ無かったと思っていたのだけれど。
かなり後味悪い
浅はかでした。ネタバレあります。
ワタクシ、映画を観る時は敢えて余計な予備知識を持たない様にして行きます。でも何かしら期待を持って行くわけです。
この映画には浅はかにもジャック・バウワー的なものを期待して行ってしまいました。
アタシが甘かったです。
スタイリッシュな映像と音響、全く勧善懲悪的ではないストーリー、でも作品全体を貫く緊張感は24Twenty-four的かな。
勧善懲悪的カタルシスなど無い泥沼の様なメキシコの麻薬の現状を描いているわけですが、唯一ワタクシがカタルシスを感じてしまった描写があります。
それは・・麻薬界のボスに娘と妻を無残に殺されたヒットマンがこいつの家に乗り込みます。ボスは息子二人と妻、計四人でディナー中です。そこで絶体絶命のボスは家族には手を出さないでくれと命乞いをします。
ヒットマンはそんな願いにも容赦無く家族を先に撃ちます。そしてそれまでの余裕とは違った怯えと恐怖に満ちた目をしたボスを処刑します。
ワタクシは先に家族を撃つ、そこにカタルシスを感じてしまったわけです。そうだそっちが先だよなと。当事者でも無いワタクシがそう思ってしまったのです。
安っぽい主人公なら家族は撃たないでしょう。正義の味方的な。本当に家族を殺された当事者なら家族が先だろうと。リアルだなと。
そしてワタクシは今も世界中で起きている報復という負の連鎖について考え込んでしまうのです。
そこには正義など無いのだと。重い映画でした。
邦題が珍しくはまった!
全員が敗者
深い闇
タイトルなし(ネタバレ)
不思議の国のアリス的な映画
わからぬ世界に飛び込む感じ。
自分はオールユーニードイズキルからエミリーブラントに夢中。アクションが良い女優さん。
今回も、ハンドガンを構える姿が最高に良かった。まだ何がそんなにいいのか言語化できないけど。
セックスシーンもファンとしては堪らなかった。銃を顎に突き付けられた時の表情とかたまらん。
ケツアゴもセクシーで最高。
もっとこんなエミリーブラントが見たい。
また、音楽が素晴らしくて、
音楽が映画の評価を著しく上げている。
硬派な感じは好み
ここは原題に沿って作品を振り返ると、殺し屋はベニチオ演ずるアレハンドロだったことになるのか。終盤はトントン拍子で核心に迫っていくが、序盤からのやや不思議かつ渋く抑えた調子から一転してしまうので少し面食らってしまう。復讐を果たすシーンではそれなりにカタルシスも感じられた。それは怖い体験でもあるがとにかくベニチオがクールだった。
検察官であったアレハンドロがプロの軍人と見紛うようなスキルを見せることで彼の復讐心の強さが見受けられた。その背景にはいかに家族が残忍に殺害されたかが伺える。
さて今作の不思議なところ。そのアレハンドロの単独潜入を除いて、基本的にケイトの視点で描かれているのでこちらも状況が掴みにくくなるサスペンス仕立てになっているが、これはまあいい。ただしケイトがあのチームに入れられたのはCIAが国内での活動に制限があるのでその逃げ道として、ということだったがそれにしては扱いが悪く、彼女の存在が作戦そのものを阻害していたのは違和感がある。映画的には隠された事実がある方が良いのだろうが、どうにも上手くない。今作はあえてなのだろうが与えられる情報が少ないし、冒頭の壁の内側に並べられた死体だとか「トンネル」が比喩じゃなかったこととか、トンネル内の暗闇で殺されていくカルテル側の奴らも暗視スコープつけてたのかとか、またあの状況でケイトがアレハンドロにすぐに銃を向けた判断とかもわかるようでイマイチよくわからないよ。
繰り返される俯瞰の映像や光と埃の描写など独特のセンスを感じさせるが、論理性、整合性という意味ではちょっと変わった作品だなと思う。
そしてエミリー・ブラントがFBIの荒事担当というのは面白すぎるキャスティングだと思ったが翻弄される役どころだったのでそこは納得。困った表情が美しい。
重い緊張
緊張感
不穏な空気漂うサスペンス
鉄板の麻薬カルテルものとして期待して観たが、いい意味で裏切られた。
冒頭のアジト襲撃シーン、主役のケイトが優秀なFBI捜査官である事が分かる。
しかし彼女が麻薬カルテル殲滅舞台にリクルートされ、当然このまま無双するのかと思いきや、彼女は実際全く蚊帳の外。麻薬捜査の真実、ありのままの現場を次々と見せ付けられ、ショックと葛藤で憔悴していく。
この世界のベテラン達によって粛々と仕事が進められていく様を、ただ呆然と見ているしかないケイト。
彼女は主役でありながら何も知らされず、全く活躍する事が出来ない。映画の観客同様、見ているしかない。
だが、それがこの物語の本質を表している。もはや米国にも深く根付いてしまったメキシコの麻薬戦争は、正義感をかざした一個人がどうこう出来る問題ではないのだ。そのジレンマが、主人公を通して痛いほど伝わってくる。
デルトロが怪演する謎の男ヨハンセンの、冷静・冷血な仕事っぷりは、恐ろしくも子気味良い。
前半、高速道路での移送シーン。民間人で渋滞する中、躊躇無く発砲するヨハンセンとチームのメンバー。その手際の良さが逆に怖い。
トンネル突入シーン。暗視ゴーグルの映像は、真っ暗闇よりも不気味さ・恐怖感が増し、異常な空間に入っていく感覚になる。
(この映像をコールオブデューティーなどのゲームっぽいと非難する人が居るが、ゲームっぽいのではなく、これが現実なのだ。ゲームがリアルに真似ているだけである。)
そして作品に終始漂う、暗く不穏な空気。安全なシーンの筈なのに、安らぐ様な雰囲気は無く、何か常に不安で息が詰まりそうになる。なによりヨハン・ヨハンセンの音楽がその恐怖を更に掻き立てている。
映画のタイトル(原題)である「SICARIO(暗殺者)」が、映画のラスト、スタッフロールの直前で表示される。
作品を全てを見て初めて「なるほど」とこのタイトルに納得が行った。
大変素晴らしい映画であるにも関わらず、上映館数が少ないのが非常に残念。全く見る目が無いというか。
放題「ボーダー・ライン」という意味も色々と考えさせられる。善悪の境界、合法・違法の境界、国境・・・。
直接的な原題より、こちらの方が深くて良いかも知れない。
最後に、直接的な残虐映像は少なめだが、腐乱死体、子供が撃たれるシーンがある事を申し上げておく。
正義の闇
始終緊張感が張りつめる。次の展開は分からない…。ロジャー・ディーキンスの美しくも不気味な映像とヨハン・ヨハンソンの不安を抱かせる音楽とが見事にマッチし、スクリーンから不穏な空気が漂ってくる。
物語の核となる3人はメキシコの麻薬カルテルのボスの逮捕という共通の目的を持って任務に挑む。しかし、共通の目的を持ちながも、個々の真の狙いは一向に見えてこない。3人の中に敵側のスパイがいるなどという安易な読みはするだけ無駄だ。観客も主人公も状況がわからないまま事態は進み、任務は次々に下されていく。ともすると、観客の理解を置き去りにしてしまうリスクのある物語構成でありながらも、国境を越えた犯罪組織の撲滅を図るという大義名分があるからこそ、物語の本質を見失うことはない。このストーリーテリングは実に巧妙だ。それゆえに、恐らくは監督の趣旨であろう“正義の闇”を観客に問うことにも成功している。
ストーリーだけじゃない。銃撃戦も見応えもある。一瞬で人命が奪われる恐怖感もある。更に後半にはスタイリッシュささえ感じるアクション演出もある。だが、この演出、一瞬でもカッコいいと思ってしまうことに正義の本質は脆くも揺らいでしまっていることに気づかされる。報復の連鎖が止まない昨今であるからこそ、ラストシーンが重くのしかかる。
時に暗く、時に残酷で、時に恐怖さえ感じる作品であるが、最後まで目を背けることのできない緊張感に満ちた怪作である。
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