劇場公開日 2016年4月9日

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「正義の闇」ボーダーライン(2015) ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0正義の闇

2016年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

始終緊張感が張りつめる。次の展開は分からない…。ロジャー・ディーキンスの美しくも不気味な映像とヨハン・ヨハンソンの不安を抱かせる音楽とが見事にマッチし、スクリーンから不穏な空気が漂ってくる。

物語の核となる3人はメキシコの麻薬カルテルのボスの逮捕という共通の目的を持って任務に挑む。しかし、共通の目的を持ちながも、個々の真の狙いは一向に見えてこない。3人の中に敵側のスパイがいるなどという安易な読みはするだけ無駄だ。観客も主人公も状況がわからないまま事態は進み、任務は次々に下されていく。ともすると、観客の理解を置き去りにしてしまうリスクのある物語構成でありながらも、国境を越えた犯罪組織の撲滅を図るという大義名分があるからこそ、物語の本質を見失うことはない。このストーリーテリングは実に巧妙だ。それゆえに、恐らくは監督の趣旨であろう“正義の闇”を観客に問うことにも成功している。

ストーリーだけじゃない。銃撃戦も見応えもある。一瞬で人命が奪われる恐怖感もある。更に後半にはスタイリッシュささえ感じるアクション演出もある。だが、この演出、一瞬でもカッコいいと思ってしまうことに正義の本質は脆くも揺らいでしまっていることに気づかされる。報復の連鎖が止まない昨今であるからこそ、ラストシーンが重くのしかかる。

時に暗く、時に残酷で、時に恐怖さえ感じる作品であるが、最後まで目を背けることのできない緊張感に満ちた怪作である。

Ao-aO