「いまさらだけど」3月のライオン 前編 marさんの映画レビュー(感想・評価)
いまさらだけど
”映像化”という意味なら合格。
”映画化”と考えれば落第。
原作ファンのためずっと避けてきた1本。
最新刊を読んだ勢いで見てしまったけど、
これ後編も見なきゃなのかな…と暗い気持ちになりました。
以下、原作ファンとしての個人的な見解になります。
まずマンガと映画では媒体としての特性が全く異なるので
原作(マンガ)のどこに映画的なクオリティをもたせるかが重要です。
限られた尺に収めるため、どうしても原作の良さはスポイルされてしまう。
だから取捨選択が必須になるわけだけど、その結果が非常によろしくない。
つまり本作で”主人公・零くんの成長”をテーマにしてしまったことがそもそも失敗だと思うのです。
個人的に原作の良さは根本的に悪人がいないことであって、
姉の香子ですら人間的な葛藤の発露があの”いじめ”であり、
本質的な悪人ではなかったことのはず。
それを表現するのが特に食事のシーンだったと思うんだけど、なぜかそこは全カット。
食事または食べ物が魅力的であることが、日常のささやかな幸せであったり
その人の人間性を象徴するのが原作の魅力だと感じていただけに、そこは大いに不満が残りました。
誰にとってもままならない人生を生き抜くために、誰かと支え合うこと。
そんな人たちと試練や災難をのりこえ、昨日よりちょっと良いと思える明日をつくること。
そんな人生賛歌、人間賛歌こそが原作だっただけに、
その原作の解釈を通した映画だからこその深みや深掘り、あるいは別視点の提示など
なぜわざわざ映画にしたのか?という意義を示せない、浅い作品だと感じてしまった。
邦画全般に言えることだけど、俳優を見せたいだけなら映画でなくても良いはず。
人気のマンガを原作にしました。旬の俳優がずらりと出てます。
なんとなく”映画”のフォーマットに乗せて形を整えただけのこういうものを、映画と呼んでいいのだろうか?