「まず、近頃の前・後編形式での公開には本当にうんざりする。 映画がヒ...」3月のライオン 前編 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
まず、近頃の前・後編形式での公開には本当にうんざりする。 映画がヒ...
まず、近頃の前・後編形式での公開には本当にうんざりする。
映画がヒットして、続編が製作されるのとはわけが違う。
私は、良い監督の条件にシーンを上手に面白くつなげることがあげられると思うが。この映画。編集権を放棄していると思われても仕方のないだらしなさだ。
決定的に、編集がまずい。長回しが多いが、「これ以上この画面からは何の情報も伝わってこない」という場面で、シーンが終わらない。その結果、将棋という「静の緊張感」よりも間延びした退屈しか感じない。
さらに原作リスペクトの視点から、この映画を判断すると、
・キャスティングばっちり
・俳優の演技も素晴らしい
・将棋シーンの見せ方に工夫が足りない
・音楽しょぼすぎ
・原作の大切な要素、絵の端々に漂う羽海野チカワールドの書き込み要素がない。ネコがしゃべったり、ムダに美味しそうな食べ物にうっとりする3姉妹、対局を見物・実況するプロ棋士たちの心の叫び、誇張した絵の表現など、大切なマンガの雰囲気が壊されている。
この内容なら前編は要らなかったんじゃないか。
現時点で、オリジナルの結末を作者の原案として入れているらしいので、どうしたって後編を見ないわけにいかない。
むしろ、桐山零がなぜひとりなのかを。そして、3姉妹との出会いと交流を。一本の映画で魅力たっぷりに描き、彼が生きている世界の要素のひとつに将棋がある。という立ち位置で完結させて良かったんじゃないか。
それが世間に受け入れられたら、初めて続編に取り組めばいい話で、前後編って、ビジネスライクにしか感じないのだ。
例えば、日本アカデミー賞を受賞するのは後編の音楽賞とか、独立した作品として評価できない。それなのに一本分の鑑賞料金を取るわけで、いじましいことこの上なし。残念な「映画化」でした。
2020.9.3