「才能が欲しい者と家族が欲しい者の軋轢」3月のライオン 前編 月野沙漠さんの映画レビュー(感想・評価)
才能が欲しい者と家族が欲しい者の軋轢
川本家の敷居が無いような、暖かい雰囲気の家族が良かった。幸田家にいられなくなって出てきた零を暖かく迎えて、ほっとした。
有村架純の演技が怖い。有村架純のほんわかしたイメージが吹き飛んだ。桐山零にプロ棋士の夢と家庭を壊されたと筋違いの恨みをぶつける。筋違いなのは理屈では理解している、しかし気位の高さから自分の至らなさを認めることが出来ずに、桐山零に怒りをぶつけずにはいられない、そんな切ない悪役をよく演じてた。
桐山零の運命が切ない。幼い子供が生存本能の為に好きでもない将棋を好きと言い、生き残るために将棋に没頭していたら、いつの間にか恨まれる存在になり、居場所も失った。そんな風に行動が裏目に出てしまう不器用で内気な青年を神木隆之介君は良く演じてた。
時々、過去の映像がフラッシュバックのように入ってきて、過去に幸田家で何が起きたか、そして零と香子の間に何があったか分かるような見せ方がうまかった。そして才能が欲しくて頑張ってた香子と家族が欲しくて頑張ってた零、それぞれに最悪の結果になってしまった皮肉さ。原作もいいのだろうけど、映像の見せ方も上手いし、役者陣の演技もいい。コミック原作と馬鹿にせずに見てほしい作品。
コメントする