「原作と比べなければ楽しめる」四月は君の嘘 Bratscheさんの映画レビュー(感想・評価)
原作と比べなければ楽しめる
評判の悪い映画ですが、私は面白く鑑賞できました。
でも、評判の悪い理由もわかりました。
結局「原作のある映画に何を求めるか」ですよね。
この映画の致命的な点は、「原作の世界観・キャラ設定・各エピソードを知っている人でないと物語を追えない」というところ。
2時間に収めるのですから、全部は描ききれない。
それは仕方ない。
でも、描ききれない部分を、行間に匂わせたり、セリフに織り込んで情報化したりして、何とかしようとするものですが…
この映画は、割り切っちゃったのかな?
「皆さん、原作も読んだんですよね?」って。
そのくせ、設定を細かいところで変えちゃったりしてる(年齢・舞台等)から 、反感を買ってるんじゃないかしら。
そういう意味での再現性の低さは、否めないと思いました。
ただね。
観ているコチラも割り切ってしまえば、面白く観られると思うのです。
別に、高校生だって良いし…
舞台が江ノ島でも、大した影響ないし…
いやね。もっと公生の成長ストーリーにスポットを当てるなら、やはり中学生であるべきだと思いますが、そうじゃないのでね。
原作の「四月は君の嘘」は、なかなかに彫りの深い作品です。
いろいろなテーマを描いている。
ラブストーリーも描いている。それぞれの成長も描いている。
「音楽を教育する」ということの難しさも描いているし、
親子のすれ違い、互いに抱える葛藤も描いている。
子供達が「自分の音楽をどう磨いていくのか」という悩みも描いている。
そして、それらを「ヒロインが病魔に倒れる悲劇」に散りばめて、大きな流れを形成している。
この映画はね…
大きな物語の中の、大筋たる悲劇とラブストーリーだけを抜き出した作品だと思うのです。
だから、原作を知らない人には、チープな作品に見えることでしょう。
「暗い過去のある天才ピアニストが、天真爛漫な可愛いヴァイオリニストと出会って復活したけど、可愛いヴァイオリニストは死んでしまう」というだけなので。
映画だけ見ると、公生くん、意外とあっさり復活してるし。
その浅さに、原作ファンは怒ってるのではないかしら。
でも、私は思うのです。
「自分の知っている『四月は君の嘘』の大筋部分を、実写で見せてくれている」と思えば、十分に面白いんじゃないかと。
自分の中の「四月は君の嘘」と、映画の映像を使って、互いに補完させて楽しむ。
その材料としては、十分に有効です。
それぞれのキャラクターの再現性は、意外と低くないと思いますよ。
特に公生は秀逸です。山﨑くん、上手だわ。
ヒロインは若干クセがあるけど、十分に許容範囲。可愛いし。
椿とか、演技のぎこちなさが、逆にリアルだった気がします。
(瀬戸さんは、個人的にはちょっと違うんだけどw)
そう。この映画は、余計な改変・肉付けをあまりしてないのです。
削ぎ落としちゃってるだけで。
なので、脳内でエピソード等 補完しながら観てると、思いの外、楽しめます。
原作を知っていて、そういう見方ができる人には、オススメですよ。