「すべてが、そのままだった」レヴェナント 蘇えりし者 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
すべてが、そのままだった
実在の人物の半生の記録をもとに描かれた作品。
作品の中での場所はイエローストーンと言っているが、実際はカナディアンロッキー山脈だと思われる。
マウントロブソン
行ったことがあるから。
さて、
大自然の美しさと凍るような寒さ、厳しさ。
自然そのままを最高のカメラ技術によって収めている。
主人公グラスの耳に聞こえる妻の声 時にその姿
冒頭 ムースを見事に仕留める。
しかし彼ら入植者がしているのは自然からの、インディアンからの搾取と強奪と殺戮。
ヴァージニア州のジェームズタウンから始まった入植。
有名なメイフラワー号
新天地にいたインディアンが彼らに食事などを提供した。
しかし彼らは英語で書いた契約書を持ってきて彼らにサインをさせた。
これによってすべてが入植者のものになったとし、すべての強奪が始まった。
この作品の視点は変化する。
冒頭
最初に白人を襲ったのはインディアン。
彼らの言い分も語られている。
アメリカ開拓史
インディアンの正当な歴史はこの世に存在しない。
すべてのすべてが、勝者の歴史。
事実は国会の黒塗り文書と同じ。
目的の毛皮
インディアンは戦うためにライフルと馬を必要とする。
それを調達しているフランス
敵であるイギリスと直接争うことなく、静かにその地を侵略する者たち。
少し前から起きているアフリカの内紛と同じ構造
お互いに武器を与え、お互い殺し合いをさせる。
実在のグラスの半生は、大自然と神の存在を感じる人。
クマに襲われ瀕死の重傷を負いながらも生きながらえたこと。
そこに物語が後付けされた。
さて、
隊長は妻の顔についてグラスに話す。
少し前には顔を憶えていたが、いまは思い出せない。
それは長期にわたる政府の命令で毛皮を集めているためだろう。
何年も会っていない。
ただそこに目標達成があるだけ。
今のサラリーマンと同じだろうか。
一方「目覚めた」グラスは、常に妻とともにいる。
妻の声に導かれている。
彼にとっては幻聴なんかじゃなく、リアルがそこにある。
だから迷うことはない。
彼にとって今は息子が全てだった。
傷を負い、動けない。
そして息子がフィッツジェラルドに刺し殺された。
声も出せない。
ジムはグラスの言いたいことがわからない。
この理不尽なくやしさは、彼の復讐心を絶やすことはないだろう。
しかし最後にグラスは、フィッツジェラルドにとどめを刺さない。
現れたアリカラ族に委ねることで、復讐という最悪の連鎖を断ち切ったのだろう。
そして妻の声 妻の姿
彼はそれを追いかけるように目で追う。
やがて、彼の視線がカメラ目線となる。
ここは最大の謎であり、視聴者への問いかけだろう。
彼はいったい何を訴えたかったのだろうか?
それは概ね、この負の連鎖を、各々持ってしまっている負の連鎖を、いまこの瞬間やめようと言っているのではないだろうか?
物語を通して描かれるアメリカ史の事実の一部
搾取と強奪と殺戮、その復讐の連鎖…
見える者には精霊と美とが見え、見えないものには金しか見えない。
これが今の社会の現実だと、彼は作品を通して訴えたのではないだろうか?
彼の最後のカメラ目線に心が射抜かれた。