「サスペンススリラーではないよ。注意」コールド・バレット 凍てついた七月 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
サスペンススリラーではないよ。注意
始まりは殺してしまった強盗の父親の復讐に怯えるスリラーだった。それが思わぬ展開を見せながら徐々にサスペンスに変化していくのね。
そして終盤では、物語の始まりからは想像できないほどの、西部劇やフィルムノワールを思わせるようなハードボイルドに姿を変える。
多くのレビュアーさんたちが書いているように、本当に驚くほど始まりと着地が違う作品になっているのね。
中盤で急展開を見せ始めたときに、なんだこれは、この先どうなってしまうの?と動揺するほどだったね。
本当に物語が確定した頃には、すっかり姿をノワール風に変えて、ああ、こっち系の作品だったんだとやっと気付いた。
それで、サスペンススリラーが好きなので観たわけだけど、予想外の展開に驚きはしたが、ノワール作品もそこそこいける私は、贅沢な和洋折衷のフルコースみたいに楽しむ事ができたね。ここでの評価がイマイチなのにビックリするほどの掘り出し物だと思うな。まあ、ツッコミどころは多いし、本当の姿はサスペンスでもスリラーでもないしで、イマイチだった人の気持ちも理解できるけどね。
死んだ強盗の父親ベンを演じたサム・シェパードが深みのある哀愁をたたえた渋い演技で、序盤から終盤までこの人に釘付けだったよね。
最初と終わりで釘付けの理由が全く違うのが結果として良いんだよね。終始、単なる小悪党のじいさんに変わりはないんだけど、ちょっとした出来事がきっかけで彼の中で何かが変わったんだな。それが終盤のノワールに活きてくるんだ。
期待や予想を大きく外してしまっていても、心を広く持てば楽しめること間違いないと思うな。柔軟な受け入れ姿勢が大事だよ。
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