「期待以上でした」クリード チャンプを継ぐ男 デインさんの映画レビュー(感想・評価)
期待以上でした
今は昔、とあるアニメ映画の同時上映作品ということで何の予備知識もなく『ランボーⅡ怒りの脱出』を鑑賞し、シルヴェスター・スタローンという俳優のことを知りました。
以来、映画を劇場で観る楽しさに目覚めた私には、翌年公開の『ロッキーⅣ炎の友情』は至高の一品でした。
「ロッキー・シリーズ」はその後レンタル・ビデオで繰り返し観ることになります。
サントラCDなども手に入れその世界観に浸ったものです。
時は流れ、現代。
かつて米ソ代理戦争の犠牲になるかのようにリングで死亡したアポロ・クリードが遺児に伴われて蘇ります。
その子、アドニスはアポロの心優しい妻によって育まれ、アポロの残した財産を受け継ぎ、エリートとしての人生を約束されていました。
しかし彼が真に継承したのはチャンピオンの中で脈打っていた闘志であり、必要なものは自分の努力で手に入れなければならないというプライドなのではないでしょうか?
父親であるアポロもまた『ロッキーⅡ』の中で、自分はロッキーという無名の男にチャンピオンとしての威信が脅かされたことを悩み、それを払拭するために再度試合を申し出ます。
ビジネス的にもキャリア的にも行なう必要のない試合ですが、アポロは闘志とプライドの塊のような人間であり、拳で決着をつけることを選択するのでした。
その結果チャンピオンの交代劇が行われます。
更には『ロッキーⅣ』においては、もともとはロッキーを対戦相手に名指したソ連のボクサー、ドラゴと強引に試合を組み、帰らぬ人になりました。
アドニスが昇進した直後に会社を辞めた時、観ていた私もその展開には少なからず疑問を感じましたが、アポロが如何にリスクを恐れず人生に挑戦してきたかを再確認したとき、アドニスの心情、そしてこの脚本を書いた若き監督の心境がなんとなくわかった気になりました。
アドニスは<You Tube>でロッキー対アポロの試合を観ます。
私はこのあたりの演出が素晴らしいと感じております。
アドニスはこの動画を壁のスクリーンに投影して観ています。
ぶつかり合う2人のボクサーが拡大されます。
静かだけれど重厚感のある音楽が流れ、ここからは過去の映像を懐かしむべき編集構成かな、と思いきや2人の姿にアドニスの影が重なります。
つまり、アドニスもまた2人のチャンピオンが視ていた光景を観ており、進むべき道を確信した、その心像を表現しているのです。
アドニスにとって亡くなった父親も老境に達したその親友もリアルタイムでチャンピオンであり、決して消え去ることのない目標なのです。
彼の生い立ちは不幸というべきなのかもしれませんが、それ自体を武器に変え財産と変えることができたのはロッキーという指導者、ビアンカという恋人、心優しい養母の影響なのでしょうか。
彼がノックダウンを喰らい朦朧としたとき、脳裏に閃いた人物がいます。
会ったことのない存在。
これからも出会えない存在。
しかし彼の本質を成す存在。
クリード。