「大いなる赦しの物語」カノン kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
大いなる赦しの物語
人間の情緒の深い部分を描いた、非常に誠実で素敵な作品でした。
三人姉妹はアルコール依存の母親に対して愛憎入り混じった感情を抱いていますが、当初は憎しみが優勢です。その憎しみに囚われているので、ありのままの自分を生きれていません。
長女・紫は母親をなだめる時に使っていた「自分が悪いの、ごめんなさい」というパターンに縛られてモラハラ野郎の餌食になっており、次女・藍は婚約者の家庭団欒に違和感を覚えて、自分は結婚に相応しくない人間だと価値下げしている。
(三女・茜は実は母親の影響が少なく、彼女の問題はプレッシャーと孤独に由来しているように感じた)
で、物語の中盤から三人姉妹は母親の足跡を辿り、憎い母親を少しずつ理解していきます。理解していくと、母親を多面的に見れるようになるため、ついに憎悪よりも愛が優勢になり、母親を赦せていくんですね。
すると姉妹も自動的に解放されていくのです。紫はモラハラ夫と対決でき、藍もなんの葛藤もなく自然にプロポーズを受け入れられます。
この赦しの物語がとても丁寧に描かれているため、深く感動しました。
その人を取り巻く世界を変えていくためには、赦しが一番強力だなぁと実感しました。本当に変わる。赦しのパワースゴい。
赦しの結果があのエンディングで、本当に美しくて素晴らしく、思わず涙しました。
演者も素晴らしかった!観る前はどうかと思っていた佐々木希も、不器用だったが熱くて良かった。
また、禁酒していた美津子が飲んでしまう場面やヒマワリ畑など胸に迫るシーンも多かったです。
富山の美しい風景も素敵で、いつか旅行したいな、なんて気持ちも生まれました。町興し映画としての役割も全うしていたと思います。
ただ…物語は素晴らしいのですが、映画としての演出が野暮ったい!わかりやすさを優先するために、やや誇張がすぎるきらいがあります。モラハラ夫とか、もっと自然だったら良かったのにな、思いました。
一番気になったのは説明セリフが多すぎること。絵に説得力があるので、もっと観客に委ねて欲しかった。十分伝わっているのに説明されてしまうと「もうわかってるよ!」と少し興ざめしちゃう。なんだかNHK富山が製作した超名作2時間ドラマみたいになってしまっております。映画的に洗練されていれば今年を代表する掛け値なしの傑作になっていたのに惜しい。
それから、公開一週目のサービスデーに観賞したのですが、映画館ガラッガラでした。とてもいい映画なのにこれは寂しい!
広報にはもっと頑張ってほしいです!興行的に爆死するにはあまりにも勿体無いですよ。
コメントありがとうございます!
やはり空いていましたか…
本当に素晴らしい映画なのですが、いかんせん地味なので話題に上りづらいのかもしれません。
おっしゃる通り、勿体無いです。
隠れた名作で終わらないことを願います。
本日(15日土曜)新宿で鑑賞しましたが、まだまだ空いてました。とても残念です。
あおいさんや謙さんの『怒り』と対比しても遜色ないほど、人間の業が描かれているのに‥‥
勿体無いですね。