明日へのレビュー・感想・評価
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すごいわ、韓国エンタメ界!
まず、朝8時50分開始の映画で、韓国のおばさんたちの話だからと思って、15分ぐらい前に行ったら、とんでもない!満席で見られなかった!なにこれ?なんでこんな人気が。翌日の予約も、もうほぼチケット売り切れ。実は主人公の息子役が、EXOというアイドルグループの一員だったらしく、若い女の子がたくさん来てました。10代、20代の若い女の子が図らずもこの映画を見るのはとてもいいことだと思いましたが、新宿で見る方はご注意を。
で、映画の方はと言えば、韓国エンタメ界の凄さを改めて感じました!
ラスト主人公とその仲間の二人のシーン。すごいなあ。素晴らしいとしか言えない。原語タイトル『カート』なんですね。
私はこの話の元になったイーランド闘争を知っていて、それで見に行ったんです。非正規のおばちゃんたちの悪徳大資本に対する闘いをリアルタイムで応援していましたし、その闘いのドキュメントも見た記憶があります。日本ではついぞ見られない労働者の必死の闘い。
これをねえ、商業映画にしちゃうって、そこがまず考えられないでしょう、この国では。題材になるような闘争もあんまりないってのもあるけど、まず、この視点が日本のエンタメ界にはないと思う。(因みにこの視点から作られたと思う、私が今年見た映画では、『パレードへようこそ』とか『サンドラの週末』です。プ・ジヨン監督は『サンドラの週末』のダルデンヌ兄弟やケン・ローチ好きと言ってるんで、やっぱりそうなんですよ。確固とした視点があるんですね、この監督は。) 後から知ったのですが韓国の名だたる女優がでているそうで、韓国のエンタメ界ふところ深いです、羨ましいです、尊敬します。
虐げられた人たちが固まりを作って闘おうとするってことは、津々浦々、あらゆる時代にあることです。私も自分の職場で一労働者として、悪徳経営やそれを支える御用組合に対してぶつかっているので、ここに描かれていることが身に沁みてわかってしまう。みんなが立て籠もって、自己紹介するシーンなんて、身につまされて、泣きました。弱い労働者が職場の命令に逆らって立ち上がるって、本当に勇気がいることですから。
最初は興奮して見ていましたが、その後の展開は、なんだか?がついて、家族のことととか、個人の話にどんどん縮まっていく感じがして、盛り上がった気分が萎んでいきました。ついには主人公の決起を促した仲間の方が裏切るところまでいってしまう。実際の闘争は立て籠もり期間も長かったはずですが、警察導入も、なんだか闘争開始翌日かと思うぐらいあっさりしていて、拍子抜けしました。
しかし、全てを見終わってからわかるのは、2時間でエンターテイメントとしてこの闘争全てを伝えるのは無理なので、削るところは思いっきり削ったんですね。労働者の団結が切り崩されて行くところは、余りしつこく描かなかった。逆にこの闘いは、実際には多くの労働者の心を掴み、闘いを応援する人たちがたくさんでたのに、その拡がりも余り描かなかった。そこに私は不満を感じていました、ラストシーンが来るまでは。
しかし、絶望的な状況の中であくまでも解雇撤回を求め続け、諦めず、ついにラストで実力闘争を再び試みる!ここが実は圧巻だった!
一度分断されていた労働者たちが、また一つの塊として一気にカートと共に押し寄せてくる!
そして、ここで終わる。そのあとの結末は、短い文章で書かれるだけ。
長い闘争の中で、闘争に参加した一人一人に色々な思いと変化があったはず。その重い経過を想像するにつけ、この物語をエンターテイメントとして作り上げたという力技に感服しました。主人公の変化が、息子の問題をかませて起きるという作り。なるほどこういうやり方もあるんだなあと思います。
最後の最後、主人公と仲間の二人がこっちに向かって突っ込んでくるスチール画像は、ずっと私の心に残るものになりそうです。
本当に今なお胸が熱くなる映画で、プ・ジヨン監督のこれからに注目していきたいです。
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