「二人の男優が魅せる絶妙会話劇」セトウツミ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
二人の男優が魅せる絶妙会話劇
川辺の階段で、主人公である二人の高校生・瀬戸と内海(菅田将暉、池松壮亮)が他愛のない会話をして過ごす。ただそれだけの物語であるが、全編を通して、心温まる、穏やかな気持ちになれる作品である。
川辺の階段の向こう側には道路があり、行き交う自動車、足早に通り過ぎて行く通行人が映し出される。現代生活そのものである。本作は、そんな気忙しい現代生活を舞台背景にした二人芝居といった趣がある。背景の気忙しい現代生活を尻目に、二人は、自分達の時間間隔で、シリアスなもの、青春の定番である恋愛などの様々なテーマで会話をしていく。
肩の力を抜いた、のんびりとはしているが、時折核心をついた、二人のやり取りが絶妙。急の背景に緩の会話が際立っている。時間がゆっくりと流れていて、忙しない毎日から開放された気分になれる。二人の若手男優の演技力の賜物である。
二人の服装の変化で、春夏秋冬、季節の変化が表現され、ゆっくりと感じられても時間は確実に過ぎ去っていることを告げている。二人の会話=青春は永遠でないことを暗示している。青春を象徴しているような哀切感溢れる音楽も効果的。
ラスト近くで、内海のことを好きな同級生・樫村一期(中条あやみ)が呟く一期一会という言葉が印象深い。人生に一度だけしかない青春を偶然知り合った友達と語り合って過ごす。目的もなく、結論もなく、ただ語り合う。そんな時が人生には必要なのかもしれない。二人を観ているとそう思えてくる。
脚本、カメラワーク、出演者の演技力が優れていれば、それだけで十分。大仕掛けなんかなくても、観客の気持ちをしっかりと掴むことができる。そんな問題提起をしてくれる作品である。