「のんべんだらり、河川敷ノスタルジイ」セトウツミ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
のんべんだらり、河川敷ノスタルジイ
“ダベる”という言葉は“駄弁る”と当て書きするそうで、
最近の言葉かと思いきや実は明治の昔から使われていた
言葉らしい。使い始めたのは当時の学生さんだったとか。
暇潰しにタワイもない話でダベる人は当然今も昔もいるらしく、
これこの映画も学生2人がひたすら河川敷でダベるという
スリルとサスペンスとスペクタクルとは一切無縁な映画。
だけどもこれが、どうにも面白い。
同監督の『まほろ駅前多田便利軒』も、
外でだらだら話してるシーンの空気感とかが
堪らなく心地良かったけれど、この映画では
75分間のだらだら会話をだらけることなく(日本語
おかしくね?)魅せる妙技をやってのけている。
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主に河川敷で繰り広げられる6エピソード+α。
ナチュラルに人を小バカにするウツミのセトいじり。
ウツミに必死に食らい付こうとして墓穴を掘りまくるセト。
快テンポの会話劇とも漫才とも違う、まさしく
“ダベり”と呼ぶ他無いこの独特な間がツボで、
開巻から終劇までずっとニヤニヤしっぱなし。
そして、絶妙のタイミングで登場するサブキャラ達。
オッカナイ先輩の切ない家庭事情にこっちまで
「神妙な面持ち」になったり、セトの家族
(父ちゃん母ちゃん祖父ちゃんみーにゃん)が登場
するたびに笑えるような泣けるような心持ちにされたり、
セトウツミの緩くも確かな繋がりに
ちょっと嫉妬するクラスの美少女だったり。
随所で流れる悲喜こもごものタンゴのリズムも、
アンマッチなように思えて妙にしっくり来る。
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恋に部活に必死に打ち込み“熱い青春”を送る
同級生達を尻目に、ウツミは心の中でこう呟く。
『どいつもこいつも、何かせんとあかんのか。
暇潰すだけの青春があってもええんちゃうんか』
ワビサビ美少女・中条あやみのアプローチを
無下に扱うようなバッキャローぶりはさておき、
ウツミの気持ちはなんだか分かる気がする。
競争心・向上心の無いゆとり世代とでも何とでも
言ってくれて構わないが、何かで優劣を競ったり
必死に誰かとコミュニケーションを取ったりする事に
さして価値を見出だせないのは僕もウツミと同じ。
だからこそ、気の置けない友人の存在が大事に感じる。
醒め切ったウツミの心にズカズカ上がり込んでくるセト。
最初はものすごく(笑)迷惑そうな顔をしていたウツミも、
妙な気を遣わずに済むセトとの時間が日常になっていく。
エピソードが進むにつれ、ウツミの表情(とセト
いじり)が少しずつだが活き活きとしてくるのが良い。
のんべんだらりな日常。他愛もない日常。だけど、
学校帰りに友達とバカな話をして、バカみたいに笑って、
そんなどうでもいいような記憶ばかりが、大人に
なった今でも思い出されるのはどうしてなんだろう。
当時はさして大切とも思わずに過ごしたそんな時間の
空気がこの映画には淡く流れていて、映画が終わる頃には
楽しいような寂しいような心持ちにさせられた。
はい、ここで神妙な面持ち。
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常時平熱だからこそ、微かに熱を帯びた部分がじんわり伝わる。
基本的には大きな感動やドラマがある映画ではないので、
秀作だぜ!とか見事な出来だ!とか声高に言うのも
似合わない感じの映画なのだけど、なんか好き。
ちょっと高めに4.0判定で。
<2016.07.16鑑賞>
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余談:
「ここはもうどっちもいっとこ! ウツミ」って
横からうっさいよバルーンアーティスト(笑)。
コメントありがとうございます♪
まさか1500本目が「ヌイグルマーZ」になろうとは…。
タイミング的に「君の名は。」になれば良かったんですが、これも見た順番で…(^^;
相変わらず件数だけ量産しており中身の無いレビューがほとんどですが、駄文でも短文でも、見たという記録を残し続けてます。もはや自己満ですが(^^;
ここまで来たら次は2000本…。
ですが、レビュー件数上位二人のレビュアーさんのペースには追い付きません!(笑)
地元では公開してない事もあり、見てない作品も多数あります。
高評価の「死霊館」も「クリーピー」もそしてこの「セトウツミ」も、レンタルになったらきびなごさんのレビューを参考にしつつ、鑑賞予定です(^^)