「贈り物をくれるだけなのに怖い」ザ・ギフト といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
贈り物をくれるだけなのに怖い
とある映画紹介Youtuberさんが紹介していたので、気になって鑑賞いたしました。
予め、中盤あたりまでの簡単なあらすじは知っている状態での鑑賞です。
結論。面白かった!!
序盤は地元に帰ってきた主人公のサイモンが高校時代の同級生のゴードと再会し、ゴードが親切に色々とプレゼントをくれる。やっていることは親切なことなのに段々と不気味に見えてくるという展開です。後半からはゴードの影響で主人公の夫婦にどんどんと不和が生じていく様子が描かれます。ありきたりな言い方になってしまいますが、「一番怖いのは人間だ」系のじわじわと怖い映画でした。
幽霊が出ないしグロいシーンもないし人も死なないのに何故か怖いという、ホラー映画にあるまじき作品。以前鑑賞した『エスター』が幸せな家庭に入り込んで内部から不和を生むタイプのホラーであったのに対して、『ザ・ギフト』は幸せな家庭に外部から不和をもたらすタイプのホラーでした。真逆のベクトルからのアプローチですが、どちらの作品もしっかり面白くてしっかり怖い良作でした。
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セキュリティ会社に勤めるサイモン(ジェイソン・ベイトマン)は妻のロビン(レベッカ・ホール)と共に、地元の豪華な新居を購入して引っ越してきた。引越しから間もなくして、スーパーで買い物中にサイモンの高校時代の同級生であるゴード(ジョエル・エドガートン)と再会した。ある日、住所も教えていないのにゴードから引越し祝いのプレゼントとしてワインが届いたのを皮切りに、ゴードは頻繁にプレゼントを持ってサイモン宅に来訪するようになる。どんどんエスカレートしていく彼の行動に対して、サイモンとロビンは何とも言えない不気味さを感じていた。
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久々に会った地元の同級生が、親切に色々とプレゼントをくれる。字面で見ただけでは伝わりにくいのですが、これが映像で見ると実に不気味なのです。最初の頃は「親切な人だなあ」と感じていただけだったのに、プレゼントがエスカレートしていくにつれて「流石に変じゃない…?」と思い始めます。
また、ストーリーが進むにつれて、サイモンとロビンの夫婦が何故地元に引越ししてきたのか、そして夫婦が抱える問題について段々と浮き彫りになっていく描写も素晴らしかった。元々問題を抱えていた夫婦だったのが、ゴードのプレゼントによってその問題がどんどんと顕在化していき、最後には修復不可能なほどに夫婦関係が崩れていく。当初観客に見せていた「仲の良いおしどり夫婦」という仮初の姿が後半になって一気に剥がれていきます。これは中島哲也監督のホラー映画『来る』に近いですね。こういう裏の顔が露わになっていく描写は私の大好物ですので、とても楽しかったです。
あまり不満点の無い映画ですが、敢えて不満を述べるならば、突然の大きな音で観客を驚かせるびっくり演出(ジャンプスケア)が作中に2度も登場すること。個人的にこの手法が嫌いということもありますし、人間関係の不和を見事に描いたジワッと怖い作品なのに、安直なビックリ演出を採用するのはちょっと残念でした。
まぁ、上記のような些末な不満点はありつつも、全体的に見れば非常に怖くて面白く、初監督作品とは思えない高クオリティの作品でした。幽霊も出血もありませんので、ホラー嫌いの方にもオススメです!!