「.」ザ・ギフト 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。J.エドガートンが“ゴード”役での出演、脚本、(共同)製作に加え、(長篇作の)初監督にも挑戦した意欲作。スリラーであり乍ら、超常的な要素や殺人はおろか、血さえも流れない。ゆっくりとズームするショットが散見出来、現実から逸脱しない範囲でのジワジワ忍び寄る恐怖を描くが、やや物足りなく思えた。緊迫感を煽りつつもリアリティに即し、丁寧に作られてはいるが、現実離れしてでも、もう少し派手な展開や演出が見たかった。どうにも無難に小じんまり纏めた小品の印象が強いが、余韻を引くラストは好感が持てた。50/100点。
・公私共に順風満帆だった生活が、過去に背を向け、開き直ったかの如く隠蔽・否定しようとする事で迎える顛末を描くが、自身の立身出世や社会的地位に迄、その影響が波及するアプローチは珍しく、“社会派”スリラーと呼ぶに相応しい。原題の"gift"とはドイツ語で「毒」の意味も持つ。
・DVD等に収録されたもう一つのエンディングでは、J.エドガートンの“ゴード”がR.ホールの“ロビン”をレイプしていないと確信出来る様になっているが、ハッキリとしたその先の復讐が描かれている。
・監督によると、本作は『ローズマリーの赤ちゃん('68)』、『シャイニング('80)』、『隠された記憶('05)』に影響を受けたと云う。亦、R.ホール演じる“ロビン”が入院した病室は237号室で、これは云う迄もなく『シャイニング('80)』に由来する。
・撮影は'15年1月19日にクランクインし、'15年2月20日にクランクアップとなり、実質25日で撮り終えたと云う。この間、J.エドガートンは監督業に集中したい思いから“ゴード”としての自身の出番を早々と撮り終えたらしい。尚、その際"Weirdo"の仮題で製作が進められた。
・鑑賞日:2017年7月16日(日)