「世のいじめっ子に捧ぐ!」ザ・ギフト everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
世のいじめっ子に捧ぐ!
良い意味で予想を裏切られた作品でした。
話が進むにつれ、夫の過去を知らない妻と共に、夫とその旧友に対する見方が一緒に変わっていきます。
2回目の鑑賞時は、登場人物から受ける印象が全くの別物!!
結構な完成度に、2度観て星が増えました。
過去に虐げた相手から届く贈り物。
それは友情か、それとも復讐か。
序盤に出て来る子供用のサルのおもちゃは、過去にGordoが嫌味で贈った物なのかと思いましたが、そうではなくて、あそこで初めてSimonの苦手なものを知るのだと気付きました。
最初から復讐する気満々な訳ではなく、いじめっ子が少しは反省して変わったのか、仲良くしようとしてくるか、それとも夫婦揃って嫌な奴なのか、探りを入れているんですよね。”I’m very happy for you.”って繰り返すのも、あれだけ過去に罪深いことをしたお前でも幸せになれるんだな、っていう意味を含んでいそうです。
しかしキッチンのボードを見て、いじめっ子の本質は何も変わっていないことを痛感します。そこで早速不自然なディナーの招待。ここからが復讐の確信犯です。”Apocalypse Now” のDVDをプレゼントするということは、あの時点でSimonが地獄と破滅の入り口に立っていることを宣言しているのでしょうか。電話は演技。恐らく外で盗聴し、自分がどう話されているかを知る。元妻の話は職業を明かさないための作り話でしょうが、「旧友」がどん底にいる時に、一緒に酒を飲んで慰めるどころか、家に来るな、関わるなと追い討ちをかけるように冷たく突き放すSimonは、弱い者イジメをしていた高校時代から全く変わっていないのです。Simonからすれば、負け犬のはずのGordoが、豪邸に住み既に子供もいるということに悔しさを感じたのでしょう。表面的には成功した優等生でいたい男ですから。
どこからともなく戻って来たワンちゃんのあの視線が辛い(^_^;)。
本当のことを知ってるぞ、と言わんばかり。
Gordoに嫌がらせをされて当然という認識があるということは、Simonにも罪悪感はあるのでしょう。ただしそれを掘り起こすきっかけは必要なようです。
真のいじめっ子は、いじめた相手の顔すらはっきり覚えていない。
ましてその後どうなったかも気にしていない。
自分の言動が、どこでどう人を傷付けているかなど、想像すらしない。
Akimboで謝罪はないよな。
謝罪を受け入れろとキレる時点で謝罪じゃない。
どんどん本性を現すSimon。
三つ子の魂百まで…(>_<)。
Gregがどの程度関与していたのか、最初から嘘と知っていたのかは分かりませんが、いじめを見て見ぬ振りしていたコイツもはっきり言って同罪。
Simonが本当のことを言わないって…
なぜキミが代わりに言わない?!
そして…子供も究極のギフトか…?!?!
クスリを盛られて撮影されるなんて怖いけど…GordoはRobynを襲っていないと思うんですよね。多分。
まぁこの際、誰の子でも良さそうですが。
2度目の鑑賞では、Gordoがむしろ夫の本性を明かしてRobynを救おうとしているようにすら見えてきます。
やたらと内容に共感してしまったのは、Simonとよく似た同級生が大学にいたからなんです。もう絵に描いたような「イヤなやつ」で、高評価を得るためなら平気で嘘をついて周りを蹴落とすし、上の者にはゴマをすりまくるタイプ。卒業後随分経ってから、知人のお兄さんがこの人と同じ高校で、嫌な思いをしたとか、悪い意味で人生の分岐点になってしまったとか、偶然聞きました。観ている内にSimonがこの人に見えてきて仕方がなかったです。
なぜ今まで気付かなかった?!っとRobynにツッコミたくなりますが、こういう輩は、良い人を演じるのも本当上手いんです。相手によって仮面を使い分ける名手です。
ただ、人生の路頭に迷うSimonの姿を見ても、特別スカッとはしなかったですね。復讐していじめっ子を奈落の底に突き落としてやっても、ふふん、ってくらいでしょうか。いじめっ子が不幸になったから代わりに幸せを得られるというものではありません。
復讐方法としては、男性ならではでしょうか。愛する妻を軽蔑する男に寝取られて、もしかして子供も…なんて、これほどの屈辱は他にないのかな。
退学になり、父親に殺されかけ、保守的な故郷に居場所もなく、強く生まれ変わろうとGordoは軍隊に入ったのでしょう。前科はあるけれど、少なくとも、いじめっ子に立ち向かう勇気と根性を備えた大人には成長できたんですよね。死ぬほど辛い目に遭わされた相手に、なかなか自分から声をかけようなんて思えません。
Rebecca Hallは“The Shining” のShelley Duvallと同系の顔つき〜ホラー向き?〜ですね。髪は短い方がスタイルの良さが引き立つし、なぜか歯茎が目立たず綺麗です。
人を呪わば穴二つ。
社交的でイイ奴が良識のある人物とは限らない。
挙動不審でヘンな奴が極悪人とは限らない…。
Robynの視点と比べて、自分のフィルターが偏見で曇っているかどうか試されます。
それほど怖くないサスペンスで、なかなか考えさせられるし、よく出来ている作品でした。
“You’re done with the past, but the past is not done with you.”
“It’s amazing how an idea can take a hold and really bring a person down.”