「タチの悪い、笑うに笑えない映画」後妻業の女 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タチの悪い、笑うに笑えない映画
『○○○の女』といえば、伊丹十三『マルサの女』『ミンボーの女』などが、すぐさま思い出されます。
どちらも、念入りなリサーチに基づいた、社会派情報サスペンスコメディ映画。
本作はいかに。
人生80年時代。
しかし、一生添い遂げる夫婦も少なく、添い遂げたとしても、連れあいに先立たれて、独り身となってからも長い時間がある。
そんな現代では、熟年老年男女の婚活も盛ん。
武内小夜子(大竹しのぶ)は、何度も結婚して、相手の財産をモノにして、死別肥りを繰り返している女。
しかし、小夜子を裏で操っている男がおり、それが結婚相談所所長・柏木亨(豊川悦司)だった・・・
というハナシで、出だしは快調。
小夜子が繰り返してきた後妻情況を短い時間で紹介するので、本家・伊丹十三の情報コメディっぽくてよい。
ところが、直近の結婚相手・中瀬耕造(津川雅彦)の死と財産分与に不信を抱いた娘・朋美(尾野真千子)が探偵(永瀬正敏)を雇って調査するうちに、映画はヘンな方向に行ってしまう。
この手のコメディ映画では、犯罪スレスレのところを巧みに切り抜けて、「ほほぉ」とか「なるほどぉ」と思わせながら、おもしろおかしく見せていかなければならないところを、小夜子と柏木が実際に手を下してしまう。
こうなってしまっては、なんだか松本清張の亜流、それも出来の悪い亜流になってしまって、笑うに笑えない。
その上、探偵も下劣ときては、噴飯ならぬ憤慨もの。
原作小説は読んでいないので、どうとも言えないが、原作タイトルは『後妻業』。
後ろに、「の女」と付けて映画化するのは、小夜子と柏木と同程度、もしくはそれ以上に質(タチ)が悪い。
できれば、「合法だけれど不適切」あたりでとどめる、もしくは「犯罪スレスレだけれど、致し方ない」のレベルにしておいてほしかった。
劇中、柏木が「これは、独り身の老人にとっては功徳や」というセリフが、まったくもってアサッテの方向にいってしまっている。
<追記>
大阪が舞台で、出演者全員が大阪弁を使うのですが、いやはや、大阪のイメージダウンも甚だしい、腹立たしい。
その上、監督の名前が、大阪の町の名前と同じく「鶴橋(康夫)」というのだから、悪い冗談にしか思えない。