「男とはいつまでも甘えん坊なガキである」永い言い訳 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)
男とはいつまでも甘えん坊なガキである
売れっ子の流行作家・本木雅弘は、妻・深津絵里を旅行先のバス事故で突然失う。
当日の夜も妻の惨事を知らず、愛人を抱いており、急な別れに涙1つさえ流れない。
孤独に事実を受け止める虚しい日々の最中、同じバス事故で妻を失ったトラック運転手・竹原ピストと知り合い、ひょんな事から彼の幼い息子&娘の面倒を見る機会を設け、絆を深めていく物語。
本木雅弘はどこまでも上から目線でイヤミったらしいヤな奴なのに対し、竹原ピストルはどこまでも無骨で裏表が無いイイ奴だ。
仕事も環境も価値観も総て対照的な二人だが、唯一の共通点は、《愛する家族への想いは、いつまでも不器用》ってぇ事である。
周りの仕事仲間にも、亡くした妻にも、勿論、遺された子供達にも。。。
事故をキッカケに、居なくなった妻と向き合い、家族とは何かを問いながら、お互いの心に大きく空いた穴を埋めていく。
特に、本木雅弘は進学で悩む竹原の長男を見守るうちに、幼少時の自分と重ねている様に思え、親とも似た愛情が芽生え、歪んだ性根に温もりを戻していく過程が愛しい。
一方、生前の妻の留守電を涙ながらに聴き、ウジウジと感傷に浸る竹原ピストルの泣き顔にも同様の共感を覚える。
忘れたいけど忘れてはいけないジレンマが様々な葛藤を生み、擦れ違いを繰り返した末、ゆっくり強めた絆を、互いの涙と笑顔で認め合う。
妻としてだけでなく、母親として、失ったトラウマを1つ1つ克服した時、最も成長したのは、紛れもなく、子供よりも親の方・竹原ピストルと本木雅弘である。
あいにく、私は夫も父親も未だ未経験だが、「男ってぇ生き物は、いつまで経っても甘えん坊な子どものまま」なのは、切ないぐらい解ったような気がした。
では、最後に短歌を一首
『淡雪と 去りゆく君の 道のりは 筆の躊躇(ためら)い 愛しさを描く』
by全竜