劇場公開日 2016年4月29日

「勝因は詩暢の描き方にあり!」ちはやふる 下の句 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0勝因は詩暢の描き方にあり!

2016年5月29日
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鑑賞方法:映画館

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ロッキーとアポロ、バットマンとジョーカー、ルパンと銭形、好敵手の存在は物語を大きく盛り上げる。下の句では最強クィーン・若宮詩暢が千早の好敵手として登場し、上の句以上の白熱のかるた戦が描かれるはずと期待をしていた。

だが、その期待は見事に裏切られる。しかし、それは良い意味でのこと。上の句はチームが一丸となって勝利を勝ち取るまでを描いた直球勝負の作品だったのに対し、下の句は変化球で際どいところを攻めてくる作品だ。前作の少女漫画から飛び出してきたかのような過剰な演出は影を潜め、主人公たちに“何の為に、誰の為にかるたをするのか?”という壁をぶち当ててくる。

そこに登場するのが、若宮詩暢だ。彼女はチームを持たない。個人戦にのみ登場する。そして、強すぎるが故に一人で戦える。つまり、千早たちが直面する壁など彼女には存在しないのだ。そして、迎える対決の時。利き手も競技スタイルも異なる相手を登場させながらも、驚くべきことに、物語は勝敗の行方よりも各々が競技に向き合う理由を見出だすところへ重きを置く。

下の句の最大の勝因は、詩暢を千早の好敵手とせず、千早を詩暢の好敵手としたところだ。千早が札を取った後の詩暢の表情が実に良い。千早が自分の壁を乗り越える瞬間であると同時に、詩暢が誰かとかるたをする喜びに出会う瞬間でもある。そして、個人戦こそが真の団体戦であるという意味を強く打ち出し、“ちはやふる”というタイトルの意味が物語の中で確かに力強く躍動する!

私は上の句にやや苦言を呈したが、それもこの結末まで持っていくための助走であるとするならば、素直に前作の批判に「ごめんなさい」と言おう。台詞で語りすぎるきらいはあるし、前作の功労者だった机くんたちが脇役に過ぎなくなってしまった点はマイナスだが、詩暢役の松岡茉優の好演に☆半分をプラスしよう。

Ao-aO