「ダメな邦画が救われる方程式...。」セーラー服と機関銃 卒業 Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)
ダメな邦画が救われる方程式...。
薬師丸ひろ子さんの前作は、
子供の頃に観ました。
当時の角川映画といえば、
人気作家たちの映画化ですごい勢い。
日本映画のひと時代を牽引しましたね。
ムービーアイドルもたくさん作りましたが、
今思うとそんな企画ならではの、
監督たちのカタルシスが
ジンジンと感じられました。
薬師丸ひろこ自身の表現力を引き出し、
女優としてのぎりぎりまで追い込んだ相米監督もしかり。
ゴダールのような映像実験もふんだんにトライし、
娯楽作ならではのこだわりも完成度を上げてました。
そんな角川映画40周年記念に、
あの名作が復活するということで、
何の知識もなしに劇場へ足を運びました。
タイトルも「セーラー服と機関銃・その後-卒業-」。
けどこれはリメイクです。
前映画のラストとはつながらないし、
先代と泉の関係や街も違いますね。
というわけで、冒頭から別解釈版と捉えました。
30分もたつと分かりますが、
とにかく演出と脚本が残念。
アイドル映画として、諦めてしまってるカンジです。
赤川次郎原作の設定が漫画なだけに、
リアリティが映画の醍醐味をつくるのでしょうけど、
完全に欠落しています。
出てくる警官も政治家も、
街の人も組のあり方も経営するカフェも、
ライバルの組長も女子高生も、
全てにおいて詰めが甘いし、
茶番感が漂います。
こんなあからさまに、
監督の力量不足を見せつけられたのは、
久しぶりでした(笑)
前作のキービジュアル、
マシンガンを撃ちまくる女子高生だって、
薬師丸ひろ子はホンモノの血まで流して、
熱演していました。
邦画の名シーンをリバイバルするのなら、
それなりの覚悟やこだわりが欲しかったですね。
あと気になったのが、照明のベタさです。
説明的に分かりやすい色を挿しこみすぎで、
かえってシラケてしまいます。
こういうのも作品を全体に安っぽい印象に、
してしまいますね。
さらに撮影のしかけやスタイリングのウラが、
数カ所画面に出てしまってて、
レベルの低さに呆れました。
けど、役者さんたちの熱演で、
2時間弱を楽しめた印象。
特に長谷川博己さんがよかった。
彼は前作MOZUでも異彩を放ってましたが、
アウトローの演技が楽しいのでしょうね。
彼の世界観で作品を引っ張ってました。
安藤政信さんも才能あふれる方ですね。
狂気に振り切ってすごい怖かった。
主演の橋本環奈さんは知らなかったのだけど、
目力があるきれいな人ですね。
演技は大味だったけど、
存在感に期待大ですね。
これも、最近の邦画に多い方程式でした。
演出や脚本のダメダメを、
うまい役者たちがカバーして、
何とか成立してるパターン。
演じてる方も、
「これはがんばらないと、がちでヤバいぞ」と、
感じるんでしょうかね(笑)
そういう意味じゃ、
役者の本気な演技を大きなスクリーンで観れて、
良かったと思いましょうか(笑)