「浸透する何か」残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
浸透する何か
ジワジワ怖かった。
静かに、劇中で語られる事実だけが淡々と紡がれていく。
いや、逆か。
紐解かれていく。
特に、驚くような演出もない。
だが、絡め取られていく恐怖感を感じていた。まるで、隣の空席にでもソレはいるような感じである。
リングの時も思ったが、「音」による作品への色付けってホントに効果的だ。
身近な分だけ、臨場感が豊かだし、もっと言うと、今の映画館の音響システムを駆使したら、観客に後ろを振り向かせる事だって出来るんじゃないかと思う…。
案の定、1人の部屋に帰りたくなくなった。
俺んちでも音がする。
いや、してた。昔からずっと聞こえてるから、さして気にも止めなかったんだけど、ぶっちゃけ音の原因はわからない。
突き止めようと思った事もない。
昔から鳴ってたから。そういうものだと思ってた。
ずっと聞こえる訳じゃない。
時折「ギシッ」とか「カタン」とか「コトン」とか。
…劇中で語られるような事、なのかもしれない。
物語的には、凄くよく出来ていた。
小さな事から広がり、巻き込まれて波及し、連鎖していく恐怖。
裏付け、事情、決して過剰な演出をするわけでもなく、あるがままに囚われていく登場人物たち。
リアクションを細かく拾い、繋げていく編集とアングルが秀逸だった。
何より、それを提示した監督が素晴らしい。
1人でお住まいの方は、夜を覚悟して観に行くと良いと思う。
なんというか、対処のしようがないのだ。
傍観するしかない。
祈るしかない。
祈るにしたって何にだろうか?
どちらも得体がしれないって上では同義のような気もする。
有効かつ確実な手立てがないのだ。だから、怖いのかと思う。
対処のしようが分かれば、怖さも半減するのだろう。得体の知れなさは変わらないのだけども。
ああ、それともう一つ。
この作品の予告編は失敗作だ。
バラし過ぎだろう…予告編により構築した進行が本編にもそのまま当てはまり、なんだかネタバラし感満載だった。
そして、案の定、本編を見ながら、その予告編を回顧しなかった事はなかった。
いちいちスクリーン以外の事に思考が削がれ邪魔なのである。
ああいう、サスペンス要素の強い作品には不向きな作りの予告編だった。