「女性の英雄の姿に嬉しくなる半面、歯痒さも。」ワンダーウーマン 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
女性の英雄の姿に嬉しくなる半面、歯痒さも。
やったね!女性ヒーロー主演のアクション大作の誕生!!と嬉しくなりながら、この映画の日本公開を楽しみに待ち侘びていました。かつてはヒーローに守られる存在だった女性が、自ら世界を救うだなんて、なんて誇らしい・・・と思っていたのだけれど、すみません、ワンダーウーマン、なんだかんだでクリス・パインに守られまくってませんか?
勿論「思っていたのと違う」というのは批判の理由にはならないことは承知しているつもりだが、なんだかんだで結局クリス・パインみたいないかにもアメリカの英雄的な若き(白人の)美青年と終始行動を共にし、一緒に寝るのがどうだの、ダンスを踊るのがどうなのといちゃつき、結局恋に落ちてキスシーンまで用意されていて・・・あぁ、やっぱり女性主人公の映画だとこういうのがないとだめなのかぁ・・・と逆にがっかりしてしまったのは事実。私はそういう要素一切なしで、本当に女性がヒーローとして描かれる映画がついに生まれたのだと期待してしまっていたのだった。
私はこの映画を観るまで、むしろ「映画が女尊男卑だったり、過度なフェミニズム臭がしたら嫌だなぁ」と思っていたくらいなのだが、映画を観ているうちに私の方こそフェミニズム的な主張が脳裏を駆け巡ってしまって、自分で自分に怯んでしまった。だって、クリス・パインと出会ってからというもの、ダイアナ(ワンダーウーマン)はクリス・パインにエスコートされっぱなしだし、だいたいにして戦闘するのにどうしてあんなにセクシーなコスチュームじゃなきゃならないんだ?って思うし、ガル・ガドットは文句なしに美しくアクション映えする女優で素晴らしいのだが、ヒーローは美しくなければならないのか?って疑問が湧くし・・・という具合に、結局常に彼女が「女性」であることを意識させられ続けているような感覚に陥ってしまったのだ。私は、主人公が女性であることさえも忘れて楽しめる映画を観たかったような気がした。でも、常にダイアナの女性性を意識させられて、かえって私自身が思わず行きすぎたフェミニストみたいになっていることに気づいてしまった。そんなつもりはなかったはずなのに。女性監督が手掛けているし、本国では女性たちの支持も厚いようなのだけれど、私としては「え?本当に?」という感じで。
「女性の英雄」ということに私自身が囚われ過ぎたんだと思う。女性が主人公だからと言って、フェミニズムの色眼鏡をかけて偏った見方をしていたかもしれない。そういうのって映画を楽しむ上での妨げでしかないですよね?反省しました。
ただ、そうでなくとも、アクションがはじまるとワンダーウーマンがもう超人過ぎてしまって、なんだか彼女が危機に陥る気がせず、全然ドキドキもハラハラもしなかったのは痛かった。銃弾は洩れなく跳ね返せるし、剥き出しの肩や腕や腿に弾が当たることはないし、何しろ強すぎてかえって平常心になってしまった。打ち返した球が銃口に戻る、みたいないかにもマンガ的な誇張のあるシーンの方がエンターテインメントとして楽しめたけど、最初から主人公があそこまで強くていいのだろうか?人間相手なら誰でも負けそうな気がしないんだけど?
とは言え、今日本ではとてもタイムリーな話題でもある「戦争」について、誰か悪者一人を殺しさえすれば戦争が終わるわけではなく、その後も闘いが続いてしまうことを「それが人間なんだ」と言及したシーンは、悪者を倒せばハッピーエンドが訪れる多くのアメコミやアクション作品の中において出色だったと思うし、今後続くであろうシリーズの展開としても頼もしい思想だと思う。うん。こういう芯のある感じは好き。
あぁ、でもやっぱり、せっかく誕生した女性ヒーローを描くのに、その表現にはちょっと不服が残ったなぁ。私って面倒なフェミニストなのかもしれない・・・。