それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさとのレビュー・感想・評価
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当事者によるシリアの記録
サッカーユース代表のGKとして活躍していた19歳の若者が、シリア内戦の反政府側のリーダーになっていく(なってしまうというべき)様子を反政府側の人間によるカメラで捉えた貴重な作品。
第三者のジャーナリストが後からまとめたような作品ではなく、当事者がカメラを回して撮っているので、強烈な迫真性がある。実際にカメラを回しながら戦場の最前線で戦っている。
始めは自分にできることで祖国に貢献をという純真な思いで民主化運動に投じた若者。たまたまスピーチの才能があり、民主化運動のリーダー格となっていくが、政府側のデモ攻撃によって170人が犠牲になった後は、武器を手に取ってしまう。そこから悲愴なゲリラ戦が始まる。彼の表情もどんどん戦士のものになっていく。人が狂気にのまれていく様子を、その人物の隣りで撮影しているのだ。観ていて苦しくなる。どこをどう見ても出口が見当たらない戦いを見せられる。
しかし、広く観られるべき作品だと思う。これが現実だと受け止めなければいけない。
私が難民支援団体のボランティアをやっている理由
私が見た、おすすめしたい難民映画「それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~」
この映画の主人公は、サッカーのユース代表チームでゴールキーパーとして活躍していた当時19歳の青年バセット。「ああ、こいつ、いいヤツなんだな」と言うことが、ひと目で分かる好青年です。
2011年に始まったシリアの民主化運動は、最初はとても平和で希望に満ちたものでした。運動のリーダーとなったバセットの表情も光り輝いていました。
でも、それが徐々に変わっていく。
町中を戦車が走り回り、道路を封鎖するようになる。
とうとう犠牲者が出て、市民の側も対抗上、抵抗組織を作って武装する。ふつうの市民が銃のあつかいを覚えるのに、たった3ヶ月しかかからなかったと言うのもショックでした。バセットの表情もすっかり変わってしまいます。
もうこうなったら、私には言うべき言葉がありません。
現に殺し合いをやっている人たちの、そのうち一方に向かって「戦いをやめろ。殺すな。相手を信じて銃を置け」と言うのは、「自分を守る権利を放棄しろ」と言うのと同じです。そもそも相手のことが信じられないから、こんなことになってしまったのですから。
この戦争機械を止めることはできるのだろうかと、いささか絶望的な気持ちになります。
同時に、犠牲になった市民を支援するのは正しいと確信しました。人道は政治にも戦争にも勝る。そう思えばこそ、微力ながら難民支援のお手伝いをしているのですから。
「それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~」2013年、タラール・デルキ監督、シリア
若者たちの民主化への無謀な闘争
2015/09/09、アップリンクで鑑賞。
台風による大雨の中、こんな日は流石に映画なんか観に来る人少ないだろうな、と思いながらアップリンクでチケットを買って映写室に入ってみたら、6割位は席が埋まってた。狭い映画館とはいえ驚いた。数日前に幼児の遺体が海岸に流れ着いてからシリアの難民問題がクローズアップされ、人々の関心の高さを感じた。
さて映画の方ですが、最初の方はバセットという19歳のサッカー選手の若者が抵抗運動のカリスマになってデモでみんなの中心になり歌を歌いながら民衆が一体化している様子が映ります。
そんな非暴力だったデモに政府軍が攻撃を始め、150人が亡くなったそうです。
このドキュメンタリーの舞台になるホムスという街は、中盤からは完全に廃墟で、道路は瓦礫が散乱し、ビルは穴だらけで崩れかけていて、彼らはそのビルの中に潜んで政府軍に応戦している。本当に内乱を制圧というレベルじゃなく、街ごと破壊しても構わないという勢いで政府軍が攻撃しているのがわかる。
兵士が撃たれるシーンや死体、血、傷口などもモザイク無しで映されているので結構エグいです。
主人公のバセットも親友を何人も殺され落ち込みながらも、アサドを捕らえて罰を受けさせる、とますます先鋭的になっていく。
やはり19歳、若いね。行動力の高さはすごいが、思い込んだら歯止めが効かなくなる。
政府から武力攻撃を受けたとしてもさらに無抵抗主義を貫いたらどうなっていただろう?アサド政権は抵抗勢力を皆殺しにしただろうか?それはわからないけど、応戦したことで被害は大きくなったんじゃないかと思う。応戦するとそれは内戦になってしまうし、政権側に攻撃を本格化させる理由を与えてしまう。アサド政権を支持する国民も多いそうだし。となると他所の国が介入するのもやりづらくなるんじゃないかな?無抵抗のままなら、人道的見地から国際的にも介入しやすいんじゃないかと思うんだが。
アサド大統領、人間的には温厚な人らしいが、この件についてどう感じているんだろうか?
それからNHKのロゴがエンドロールの最後の方に出てきたが、資金援助でもしたのだろうか?そんなことしてないで独自にこのくらいのドキュメンタリー制作して放映しろよって思う。
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