「タイトルなし(ネタバレ)」この世界の片隅に ふーみんさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
原作は未読のまま、クラウドファンディングの話を知ったりして気になっていたので、公開されたら必ず観ようと思ってました。
まず、主役ののんさんの好演が印象的でした。おっとりとしつつも力強く生きた主人公にぴったりで、他の人は考えられないほどの適役。
数年分の出来事を二時間で描くために、話はかなりのスピードで進んでいくのだけど、観ていると、とてもゆったりとした気持ちでいられるのはこの好演によるものだと思う。
今までの戦争映画にありがちな、悲惨さを強調するのではなく、あの時代を生きた人々の日常を淡々と語っていく。そこには笑いがあり、物資が欠乏する中で工夫するたくましい姿もある。
それでも、歴史を知っているだけに日付が進むごとに胸が締め付けられる思いになる。
戦争はそういう何でもない日常を否応なく壊してしまう。家族を奪い、楽しい時も辛い時もすずさんの心の支えとなった絵を描く右手も奪った。
エンドロールも素晴らしかった。すずさん家族のその後や、絵を描くすずさんの右手が描かれていて、戦争を生き残った人々の未来と、戦争で奪われていなかったらあったはずの未来の可能性を表してるのかなと感じた。
声高に戦争反対と言っている映画ではないけど、改めて、二度と起こしてはいけないという思いを強くした。
いろんな世代、たくさんの人に観て欲しい。自分も、一回では捉えきれなかった部分があると思うので、もう一度観たいと思う。原作や関連本を読んでみたいし、広島にも行かなくてはと思った。
最後に余談だけど、鑑賞したシネマシティの袋と本作品のパンフレットが絶妙のマッチで、戦災から復興した現代の町並みに思えた。あの当時も今も、この世界の片隅に生きている、すずさんたちと自分たちがより身近に感じられた。