「戦争の裏にも必ず日常がある」この世界の片隅に まえじーさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争の裏にも必ず日常がある
今まで戦争映画は山ほどあったけど、こんな作風の映画に初めて出逢った。
そんなに戦争映画を観ていないからかもしれないけど、とても新鮮だった。
日常の中に戦争がある。日常の中に原爆があった。
空襲のサイレンが鳴り子供が「防空壕飽きたぁ」と言うセリフはとてもリアルだった。
不謹慎と思われがちなセリフだけど、その時代に住んで、何度も体験したら一度は誰しもが思ったことだと思う。
私は東日本大震災で生きてるし被害も帰宅難民になる程度だったけれど、やっぱり地震が何度も起きると「地震飽きたぁ」と漏らしそうになったことがある。
だからこそとても共感した。
そして2時間越えの作品でも全くそう感じさせないストーリー展開とテンポの良さ。
「え、もっとそのエピソード紹介しなくていいの?」と思う程、サラッと終わる。
どうしてもそのエピソードを話すとき事細かくなりすぎて飽きてしまうけど、要所を話して質問されたり小出しにした方が話が盛り上がるのと同じ空気感。
また各所で絶賛されている声優陣。
すずを演じるのんさんは、予告編で観ても「確かにおっとりはしてるけど合うのかなぁ」と半信半疑だったけど、あなたしかいません。そう思うほどぴったりだった。
周作演じる細谷佳正の声も合ってたなぁ。(進撃の巨人のライナーとは思えんレベルで)
原爆投下前後は確かに沢山泣いたけど、その中でもくすっと笑えるところは沢山あって、無理に笑わせようとするわけではなく、日常の風景でくすっと笑える要素が沢山。
そう、この映画、戦争映画だけど、一人の人物の人生の物語でもある。
一人の人生の中に、成長や結婚、色々な思い出、悲しい戦争、原爆投下で苦しみ、そして生きていく姿が素敵にまとめられていました。
戦争は酷い事だし、あってはならない。
その事を訴えるのももちろん大事。
そこにあった事実・日常を描くのも大事。
そんな色々な事を思わせられる映画だった。
戦争映画だけど戦争映画じゃなかった。
毎回今年の邦画1番だなって思うのに、『この世界の片隅に』もそう思わせられる映画だった。