「この世界の片隅に」この世界の片隅に Kjさんの映画レビュー(感想・評価)
この世界の片隅に
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果たして戦争映画かどうかすら分からなくなるぐらい普遍的な何かを映し出しているように思う。戦争論というよりも、戦争という事象は背景に過ぎず、人が生きる姿、人生論なのかもしれない。
一市民から見た戦争描写は非常に斬新なものが多く、未だかつてない描写力で、自らがその場にいればこういうものかもしれないと納得させられる。
見た中で色んなシーンが焼きつき頭の中で色々と反芻してしまう。そんな中でも玉音放送のシーンは強烈な印象が残る。8月15日に戦争が終わることを知る私からすると、何とか終戦を迎えて安息を得てくれと思いながら見ており、ようやく辿り着いた安息日にこっちとしてはホッと胸をなでおろす所だが、それを見事に裏切ってくれる主人公の感情の爆発。終戦に泣き崩れた人の感覚はこれまでイマイチピンとこないものであったが、そうだよなぁ、これまで色々失っていく中で、いつかは自分も死ぬかもしれないという思い、それが定めと考えていたかもしれない。しかし、一転して自分は失われないと分かったとき、それまでが全て不条理になり、失った者に対するやるせない気持ちを一気に背負わされる。そんな気持ちにこれまでなれなかったよ。
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