追憶の森のレビュー・感想・評価
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解放へ
アーサーという一人の男が、森に誘われ、迷い、考え、気づき、そして解放されていく物語。
アーサーの感情の動きを、映像と音楽と最小限のセリフで表現し尽くし、これが映画なんだと思わせる。
終盤にポツリポツリと明かされる事柄が、観るものにも解放感を与えていくような素晴らしい作品だった。
空気感、リズムが良かったと思う。違和感を感じ部分もあるけど、全体を...
空気感、リズムが良かったと思う。違和感を感じ部分もあるけど、全体を通して東洋的な生への向き合い方が描かれてるし、夫婦生活の対比とかは感情を揺さぶられる。
青木ヶ原、一度だけ行ったけど、確かに神秘的な場所だった。
観ていたい!とは思えなかった
富士の樹海を舞台に、自殺志願者のアメリカ人と日本人の心の交流を描くというテーマはいいけど、映画自体すごく地味で、男二人の交流をただ長時間魅せられても、観ていたい!と思えず、途中から興味が薄れてしまった。セリフを注意深く追っていけば、主演のアメリカ人男性の妻との関係や自殺をしようと思うまでの過去のエピソードも理解していけたのだと思うが、そうしようと思うだけの興味を引く魅力がこの映画にはなかった。
逆のこの映画がすごくハマったという人がいたら、その人には興味が湧くなと思った。一部の人には、興味を引く内容かもしれない。
死の入り口、生の出口
2015年のカンヌ国際映画祭で上映されるやブーイングを浴び、ガス・ヴァン・サント監督のワースト作とまで。
確かに万人受けしそうな作品ではないが、そこまで酷い作品ではなかった。
最も、この監督の生死を扱った作品は取っ付き難いものが多いが。
死の為に死の場所を訪れた主人公がそこで見出だしたのは“生”。
死を通して生を浮かび上がらせる、話の展開的には悪くない。
海外で不評だったのは、東洋的な死生観。
でも輪廻転生などは日本人には分かるものなので、本作は日本人が見ると普通に見れるわけ。
欧米(だったかな?)の死者がヴァルハラで待っているというものが日本人にはピンとこないのと同じ。
それより、話の作りで難点が幾つか。
ほとんど森の中が舞台なのでヘンな日本描写はあまり見られなかったが、主人公が出会う日本人が都合よく英語を喋れるのは何もこの作品に限った事じゃないが何とかならないものか。
また、主人公は妻を亡くしている。それが自ら命を絶とうする理由。
妻は腫瘍が見つかり、手術は成功して、不仲だった妻と関係が良好になるが…、あのシーンは妻がどうなるかすぐ察しが付き、ちょっと安直であった。
それと、何でアメリカ人が自殺の為にわざわざ青木ヶ原樹海を訪れる不思議は分からんでもない。
マシュー・マコノヒーと渡辺謙の演技にケチを付ける人は誰も居ないだろう。
特に、焚き火を前にしての二人の抑えた会話のやり取りは本作のハイライト。
「フールズ・ゴールド」なんて駄作に出てた頃を思うと本作のようなマコノヒーの演技には誇らしいものを感じるし、渡辺謙の役柄は人それぞれの解釈。
日本人には“陰”のイメージがある青木ヶ原樹海が美しく撮られている。
東洋的な神秘さが生と死を包む。
つらかった
見てて、後悔した。おもかった。画がまたその重さを表すような画で、決して緑が美しくないわけではないけど、おもかった。真剣にはみれられない。ただ、そこまで感じるということはストーリーとしての相性だとはおもう。
英会話の森。
青木ヶ原の樹海に清々しい印象を抱く日本人は皆無だと思われるが、
外国人にとっても、何でわざわざ自殺しに日本へ行くんだ?という
お叱りの言葉がかなり多かったらしい…^^;まぁ、それはさておき…
どう見たって自殺なんて考えそうにないマコノヒー氏が死に場所を
求めて樹海へとやってくる。理由は妻の死になるのだが、なぜ?と
いうその真相はやっと後半の方で語られる(確かにあんまりな最期)
そして樹海の中で出逢う日本人タクミはなぜか英語がペラペラ^^;で
かなり珍しい妻と娘の名前を教えたりする。不自然、これは不自然!
と大いに訝りながら最後まで観た方が後でスッキリする作品である。
ホラーというよりミステリー性が高いが、怖いという印象でもなく、
(これは謙さんの影響強し)最後は本当に清々しい気持ちにまでなる。
樹海という超自然な地帯で繰り広げられた舞台劇のようなリアル感
も、突然登場する不可思議な日本人にかなり気分がそがれるけれど。
(あそこまで行き思い止まる人もいるのね。立て看板がリアルだった)
語ることで描ければ…
自ら命を絶つと決めたアメリカ人のアーサーが富士の樹海でタクミという人物に出会う。自殺の地として知られる樹海を美しく映し出し、その中を彷徨いながらアーサーのそれまでの経緯が語られていく…
物語自体は悪くない。所々に散りばめられた伏線もきちんと回収し、良いところに物語を着地させている。しかし、何故だろうか?この作品から自殺を決めた者の覚悟、或いは自殺するということに対しての躊躇いが伝わってこない。
自殺は生きている者にしかできない行為である。裏を返せば、強い“生”が描かれてこそ、“死”の描写が強調されるのである。だが、この作品は主人公が自殺を決意するまでの経緯の大部分をネガティブなトピックで綴っている。時に唐突な展開も起こるが、回想部分を映像で表現している為に過剰に不幸を演出しているように思えてしまう。
アーサーとタクミが暖をとりながら、自身の過去を語るシーンは本作のハイライトだ。彼の妻への不器用な愛が伝わってくる。ある意味で唯一ポジティブなシーンと言っても良いが、ここに回想シーンはない。つまり、ネガティブなトピックは映像で見せるが、ポジティブなトピックは語るだけという描き方がアンバランスさを生じさせてしまってるのだ。故に、圧倒的に“生”の面が弱くなってしまい、アーサーの“生きたい、でも生きていけない”という感情を汲み取ることができないのである。
ナオミ・ワッツはアーサーの妻役を好演したが、マシュー・マコノヒーも渡辺謙の演技力に長けている俳優である。それならば、二人の会話を通じて妻の存在を浮き彫りにした方が、より観客の琴線に触れる作品に仕上がったように思えて仕方がない。
青木ヶ原樹海って…
想像していたよりも、ファンタジーな要素があってびっくり。もう少し暗い内容だと思っていました。
洪水のシーンあたりからリアリティーに欠けてる印象を受けました。もう少し感動が欲しかったです。
生命と愛が蘇る「樹の海」
世界で最も有名な自殺ポイント。日本の「青木ヶ原樹海」
そこで自殺を試みた男、アーサーが、樹海で彷徨う日本人に出会い、不可思議な体験をする、という物語。
この作品、当然のことなんですが、登場人物は少ない。
アクションシーンなんかない。
アーサーを演じるマシュー・マコノヒー、渡辺謙さんの、ほぼ二人芝居。
これをどうやって、監督が観客に飽きられることなく、映画作品として提示するのか?
それが本作の鍵となってきます。
たとえば、私小説の類が好きな方には、受け入れられるかもしれない。
とても内省的な映画です。
樹海は、人が立ち入らない分、ありのままの自然が残り、まるで太古の神代の時代を思わせる風景。
そこは一度入ったら抜け出せない「ラビリンス」「森の迷宮」でもあります。
森をさまよう二人の男性。
彼らは抜け出せない森の中で、夜を明かします。
不思議な声がどこからか聞こえる。
土もない、岩の表面から、一輪の花が咲いているのを発見したりします。
「向こうの世界に逝った人間の証だよ」
渡辺謙さん演じる「タクミ」がポツリとつぶやきます。
「彼岸」と「此岸」の境界で彷徨い続ける二人。
とても精神世界の中、奥深くまで描こうと監督は苦闘しています。
彼岸と此岸ということでは、邦画の「岸辺の旅」という作品があります。
これは、今は亡き夫が、たびたび妻の目の前に現れるという、幻想世界を描きます。
せつなくて、どこかおかしくて、愛おしくなるような佳作であると感じました。「岸辺の旅」と比べて、本作は、やや「ハリウッド」寄りの「味付け」がなされております。
アクションシーンこそないものの、森をさまよう中で、崖からの転落や、洪水に巻き込まれたり、といった迫力ある見せ場があります。
そのさまよいの中で、主人公アーサーは、フラッシュバックのように過去を思い出すのです。
ここで映画のマジック、編集の出番ですね。
時間軸は過去に遡り、アーサーとその奥さんとの日常を描きます。彼は科学者でした。
幸せな結婚生活。だけど年を経過するごとに、少しづつお互いの波長が、どこかずれてくる。時には諍いもある。
「たった年収2万ドルで、いつまでこんな暮らしを続けるの!」
妻のジョーン(ナオミ・ワッツ)は夫に上昇志向や、ガッツがないことに苛立っています。彼女だって仕事で忙しい。
気まずい二人の生活の中、ある日、妻に体調の変化がありました。
病院での精密検査の結果、ドクターから受けた宣告。
「奥様の脳に腫瘍が見つかりました。手術で除去するしか方法がありません」
現代の医学は目覚ましい進歩を遂げています。
夫婦は奇跡を信じて手術を受けるのですが……。
主人公の科学者アーサー。
彼には「科学的思考」パターンが体に染み付いています。
世の中の不可思議なことは「必ず科学が解明してくれる」と信じています。
僕もそれに大いに共感します。
本作において、とってもバランスがいいと感じるのは、安易に
「精神世界は科学では解明できない」
とあたかも「悟り」を開いたかのように、決めつけていないことです。
多くの人が「悟った顔」をしているのは、実は自分が考えつめて行き着いたのではなく、有名人が言っていることに従う、という実に安直な「借り物の悟り」であることがほとんどです。
この世は何からできているのか?
人は死んだらどこへ行くのか?
魂とはなんなのか?
主人公は、日本人である「タクミ」に出会うことによって、東洋、日本人の死生観をわずかではありますが、垣間見ることになります。
先日、テレビの科学番組を観ました。
地球上の人類が発見した元素、それを全て合わせても、全宇宙のたった6%にしか過ぎない、ということが、ようやく分かってきたそうです。
人間は、まだまだ「無知なのだ」「何もわかっていないのだ」ということが、ようやく「分かり始めた」らしいのです。
量子論、ブラックマターなど、僕にはとても難解で理解できませんが、まだ人類の知らない手段で、いろんな物が、いろんな「コミュニケーション」を取っているのかもしれない。
以前読んだ本の中で、植物学者が、樹齢1,000年などの古木を調査する時、その樹木が放つ「オーラ」のような「霊力」があまりにすごいので、
「この木はやめておきましょう」と、別の木に代えて調査することがある、と語っていました。
科学者がおもわずビビってしまう、年齢を重ねた樹木だけが持つ、近づきがたい魔力。それは一体なんなのでしょう。
樹木がなんらかの方法で、生物である人間に、それこそ細胞レベルで、シグナルを発した、のかもしれませんね。
青木ヶ原の樹海。一本一本の樹木たちが教えてくれること。
自分という人間は、分子や細胞の集まりに他なりません。
しかし、その集合体は、一人の人間の名前を持ち、自分の頭で考え、行動します。更には人を愛したり、慈しんだりする「こころ」をもった、細胞の集合体になりました。
ついには、自ら命を絶つ意志さえ獲得してしまったのです。
ですが、世界中70億個体の人間、すべてが一人一人違う個性を持つ、というのも、紛れもない現実です。
これが「奇跡」でなくて何なのでしょう。
本作の原題は「The Sea of Tree」樹木の海です。
海は豊穣のシンボル。
そしてなにより、「生命」の揺り籠でもあります。生命はここで生まれ、育てられ、成長してゆきます。
まだまだ、未熟な「人間」を再教育し直す、そのキッカケを「樹木の海」は気づかせてくれたのかもしれません。
良作だと思います
日本の富士の樹海が舞台だと知らずに見たのですが、良い作品だと思います。
樹海の映像は綺麗でした。が、樹海のシーンがとても多く、もう少し、変化が欲しかったように思います。
主人公が樹海に入り込むにつれ、道を見失い、妻の魂に出会い、助けられ、人生を再び歩み始める。というのが、主人公の人生の暗示であるところ。
また、キイロとフユの仕掛けなどとても良いと思いました。
なんとも…
最初汚いおっさんがなんか樹海をさまよってる!!って思いながら見てたら、最後に、あっ!と気づいて心がジーンとしました。
題名がなんで「追憶の森」なのかを考えさせられました。
個人的には好きな作品の1つになりそうです。
味わい深い。
僕にとっては問題監督であるガス・ヴァン・サント。初期の頃のややとんがった感じの作品は受け入れられたが、カンヌをとった「エレファント」あたりからあやしくなってきて、エンタメ傾向だと思われた「プロミスト・ランド」はパスしてしまった。
だが、気になる監督ではある。
今回は、日本が舞台で渡辺謙も出ているということで、要チェック作品になった。
悲しい物語ではあったが、いい映画だった。
青木ヶ原には、たまに行ってみたい誘惑にかられる。無論死ぬ気などないのだが、どんな場所なのか見てみたい。
本作に描かれたように、要所要所に死を思いとどまらせるような看板が、実際にあるのだろうか。
アーサー(マシュー・マコノヒー)に寄り添うように映画は進んでいく。樹海に入り、タクミ(渡辺謙)と出会い、タクミに自分の思いをぶつけるところでは、アーサーとシンクロする自分がいた。
ガス・ヴァン・サントは脚本に従って演出した感がある。その脚本はクリス・スパーリング。「リミット」「ATM」の人ときくと、本作の味わいはサントの功績なのかとも思う。
いずれにしても、いい具合の作品になった。
途中までは…。
自殺をしようとしているのに、生き延びたい
という、ある意味で人の矛盾が描かれており、それも人間だな…という感覚で観ていた。
その意味では、この時点まで駄作感に満てていたが、後半に全てが解き明かされるにつれて、感動とまではいかないまでも、満足感を得ることができた。
ただ、もう一度観たいとは思わないかな…。
温かい気持ちに…。
富士の樹海といえば、
さまよう中で出てきたシーンのような闇のイメージだが、時折出てきた高台からの素晴らしい景色に加え、
最後の種明かしにより、心の闇が一気に晴れ、
ふわっと温かい気持ちになりました。
ファンタジー要素溢れる優しい映画でした。
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