追憶の森
劇場公開日 2016年4月29日
解説
「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」のガス・バン・サント監督が、自殺の名所として知られる日本の青木ヶ原樹海を舞台に、マシュー・マコノヒー&渡辺謙共演で描いたミステリードラマ。自殺するために青木ヶ原へやって来たアメリカ人男性が、そこで出会った日本人男性との交流を通じて再生していく姿を描く。人生に絶望して自殺を決意したアーサーは、富士山麓に広がる青木ヶ原樹海を訪れる。磁石が狂い携帯電話も通じない森の中で、出口を求めてさまよう日本人男性タクミと遭遇したアーサーは、怪我を負っているタクミを放っておけず一緒に出口を探すことに。過酷な状況に立たされる中、アーサーは運命共同体となったタクミに次第に心を開いていく。やがてアーサーは、自分が死を決意するきっかけとなったある出来事について語りはじめる。アーサーの妻役に「21グラム」のナオミ・ワッツ。
2015年製作/110分/G/アメリカ
原題:The Sea of Trees
配給:東宝東和
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2022年1月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
正確には、樹海は霊場じゃなくて、富士山という霊場のお膝元ですが。
『千の風になって』が好きな方なら、はまるかもしれない。
魂の帰る場所。宿る場所。…囚われてしまう場所。
精霊が支配する場所。
そんなイメージがわく、樹海。
神秘であり、神聖な場所。
そんな場所を舞台にした物語。
本当は、好きなテーマなんだけれどなぁ。好きだからこそ、この映画を許せないのか。
死と生に関する話。
でも、『BIUTIFUL』を鑑賞した後だと、表面的になぞっただけの映画のように見えてしまう。他でも聞いたような言葉ばかり。
制作者の死生観が突き詰められていない。
脚本家と、監督と、制作者の意見がまとまらなかったのか?
否、それぞれが、死生観に向き合わずに、雰囲気だけで撮ってしまったように見える。
キリスト教信者も日本にいないわけではないが、富士山とそれにつながるものは、元々、日本古来の土着ー山岳信仰の色濃い場所。
そこに、”煉獄”という、キリスト教的概念をねじ込んでくるなんて。なぜ日本?と思う。もっと、キリスト教に親和性がある欧米にだって、南米にだって”森”はあるだろうに。
たんに「樹海で撮ってみた」のか。撮影はボストンの森だけど。なぜそこではいけなかったのか。
ネットで検索して出てくる「死に適した場所」のイメージだけで撮ったのか?
でも、
この場に、”樹海”にこだわるのなら、もっと日本の信仰・死生観について理解してほしかった。
ところどころ、日本の死生観に似ている雰囲気もあるが、死者の衣服をはぐ場面に抵抗を感じる。死者への礼というものを持ち合わせていない。合理主義を旨とする欧米の映画。
乱世を舞台にした黒澤明監督映画にも死者の衣服をはぐ場面はある。黒澤映画の中では、”魂”の存在を否定した、”生”のエネルギーの象徴としての行為だったような。だから、アーサーが魂の存在を認めていないという描写としては共感するけれど、「死ぬために来た」設定には見えなくなる。死を決意しても尚の自分本位な性格を表す描写なのか。”死”を意識しつつも、無意識では、ということを表現したかったのか。でも…、映画のあの段階では、納得がいかない…。
アーサーは”煉獄”に囚われていたのか?
回想場面は圧巻。夫婦だからこその痛みがビシビシ伝わってくる。
だが、回想場面と、樹海での動きがバランス悪く、考えまいとしても、考え、思い出してしまうようにはつながらないから、”煉獄”に囚われているようにみえない。このようなフラッシュバックの挟み方描写は『ハドソン川の奇跡』がうまかった。
とはいえ、監督の中ではアーサーは”煉獄”に囚われていたから、あんなに傷ついていても動けるのか???
その辺をぼかして、あえてどうともとれるように撮ったのか。
にしては、種明かし場面が強引すぎる。
妻の名もキイロって。ミドリとか他にらしい名前もあったろうに。森の緑=妻に包まれた時間というのもいいと思うが。
そして、あの花を飛行機に乗せられるの?検疫は?USAの入管で取り上げられないのか。
脚本が荒すぎるのだ。
そして渡辺氏。
山崎努氏主演の舞台『ピサロ』で初めて、渡辺氏を拝見した時は、その輝くばかりの才能に驚喜した。あの山崎氏にちょっと押されながらも、しっかりと相手役を務めていた。
けれど…。正直、最近の演技は見ていられない。
今回の演技も、シーンごとには秀逸なのだが、通してみると人物像が一貫していない。インタビューで「うさんくさく演じた」っておっしゃっていたけれど、うさんくさいどころか、別人だよ。その時々現れる、樹海を彷徨っている霊、そして別の時は〇〇の霊だったのか?
そして、ハリウッド版『ゴジラ』の時も思ったが、こだわるところは発音じゃなく、原爆でしょ!と言いたいし、今回の映画でも、日本人なら誰でも違和感もつ日本について監督に教えなかったのか…。真田氏は細かくツッコミ入れるというけれど、渡辺氏は与えられた役だけなんだろうな。
『ラストサムライ』の勝元とは違って、その場その場のことだけで何にも考えていないんだろう。
と、大切にしているものを踏みにじられた気がする映画だが、
それでも、森の景色には圧倒された。
緑と光・闇、水に抱かれる時間 を堪能した。
2021年1月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
自殺の名所、富士山青木ヶ原樹海を舞台にした、サバイバル・ドラマ。折々に見せる回顧録が、自殺を至る経過を物語ってはいるが、渡辺謙とマシュー・マコノヒーによる二人芝居のように展開される。
死を決意して、わざわざ日本に来て、樹海に足を踏み入れた主人公・アーサー。しかしそこで、一旦は自殺をしようとしたが、死にきれず彷徨っているタクミと遭遇。
樹海の中で、精神的にギリギリに追い詰められ、死を渇望した2人が、改めて生への本能に目覚めていく。その象徴が2人で火を起こし暖を取るシーン。死への恐怖を炎と歌で必死に打ち消そうとし、それまでの経緯を語り合う。
人は、死を決意しようとする時、生に一番に縋りつくものになるのでしょうし、それが、生物としての本能なのかもしれない。
設定や内容的には,ツッコミ所はいくつもあったが、2人の演技については、アメリカ人と日本人の違いを上手く演じ、言うことはない。そして、最後のタクミの存在が、単なるサバイバル・ドラマから、温かなヒューマン・ミステリーへと彩りを添えている。
一つだけ、言いたい。ハリウッドが日本を描くと、どうしても着物の女性や日本人になりきれない東洋人役者が目に着く。今回も、日本が舞台で、渡辺謙が出演しているにもかかわらず、やはりそういうシーンがあったのが、残念。
2020年11月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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とてつもない感動は無いが、渡辺謙から託されたきいろ、ふゆが亡き妻の好きな色、季節だったというところに小さな感動があった。浮気が原因で仲が悪くなり、互いに感謝し合わない夫婦が妻の病気を境に再び距離が縮まるが、交通事故で妻を亡くしたことで自暴自棄となり富士の青木ヶ原樹海で死のうとするマシュー・マコノヒー。何となく渡辺謙はファンタジー、幻ではと気付いたが、心地よかった。
2020年9月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
魂を信じます
根拠も経験も何もないけどあったらいいな〜と思うから
楽天的な性格なのかはたまた深く試行する回路があまり発達していないのかは分かりませんが死を考えるほど深く沈んだことはとりあえずありません
かと言って何も考えずに毎日をお気楽に送っている訳でもありませんけどね
深く傷ついた事だってあるしとてつもない悲しみと遭遇した事だってあるけど死を選ぶことは無かったな
世界的にも有名なのでしょうかね『Sea of trees 樹海』は
最初にこの作品を知った時からあまり暗さを感じず観てみて改めてその感覚は間違えではなかったのだと確信できました
悲しみや苦しみ絶望よりも前へ進む力になると思います
押し付けがましいことはありません
ふわりとかけてもらえた羽布団のような心地よさ
あの時の悲しさはもう忘れました
立ち止まっていた時期もあったけど時間というものは素晴らしい薬ですね
そして沢山の映画にも助けてもらいました
この作品もきっと誰かの助けになるのだろうと思います。
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