「平田オリザのロボット演劇を通じて分かるように、人間がAIに感情移入...」エクス・マキナ HammondJ3さんの映画レビュー(感想・評価)
平田オリザのロボット演劇を通じて分かるように、人間がAIに感情移入...
平田オリザのロボット演劇を通じて分かるように、人間がAIに感情移入できるようになる時代はもうそこまで来ているのかもしれない。
それは恐らくAIにとっても、人間の感情を汲み取る時代が同じく来るということなのでしょう。
ただ違うのは、人間が他者に感情を通じて共感や反感を起こし、愛情や憎しみを抱くのに対し、AIは相手のリアクトから読み取れる感情を最大限有効的に利用しようとする。
人間同士、あるいはペットの犬や猫とのコミュニケーションにおいて、相手の反応を咀嚼し得ないことは多々あるが、そこにコミュニケーションの面白みが生まれるのに対し、AIはその汎用性から言語以上に表れる感情の機微を認知し、完璧な処理を経た会話を図るので、複座でスマートに見えるコミュニケーションさえ淡白なものになってしまう。
この違いは、人間が他者なくして存在し得ないのに対し、AIはその実体そのもので自己認識が成り立ってしまうことを示唆しているのかもしれません。
今作では、この人間とAIによるコミュニケイトの応酬が、不可解さを生みそれが不気味さにも繋がっていて、最後まで緊張感を損なわない作りになっています。登場人物が2人の人間と1人のAIに絞ったことで、対比が際立つところも効果的でした。
集約すると、青ひげフランケンシュタイン博士を現代に置き換えた会話劇なのですが、この作品では、セリフの一つ一つ、ショットの細部までが、何かの意味を持っているように見えます。それが何なのかは上手く言葉にはできないのですが、集中して見ると、より作品のテーマに深く入り込めます。
音効も、機微といっていいほど作り込まれていて、劇場で観ていただく方がより分かりやすくて面白いと思います。