ブリッジ・オブ・スパイのレビュー・感想・評価
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資本主義 VS 共産主義
当時の冷戦状況がよく分かる映画だった。
ただ、アメリカが制作した映画なので「資本主義が全て正しい」と言っている様な内容には、少し疑問が残ってしまう感が否めない。
1つのイデオロギーを表現するのでは無く、単純に交渉劇を深く掘り下げた描き方でも良かったのではないか。
アベルを死刑判決にしないことにより、「アメリカが、司法による裁きを重要視する正義の国である事を世界にPRできる事、アメリカ人捕虜を想定とした交換カードを得る事ができること」この2つを得る事が出来た事が、ドノヴァンの交渉の旨さが伺える。
何れにしても、最後にはドノヴァンとアベルの2人の間には、互いの国が掲げているイデオロギーを超えた関係性が築かれていた。
思想、イデオロギーのぶつかり合いなんて、本当に意味のない事。ドノヴァンとアベルの最後の関係性を見ていると、本当にそう思わせてくれる良い映画でした。
「ブリッジ・オブ・スパイ」を観て・・
スピルバーグ監督でトム・ハンクス主演の強力コンビの作品。実話から・・舞台は1950年代から60年代の米ソ冷戦時代。ソ連の老スパイの弁護人になった主人公。結局、裁判で懲役刑となり刑に服す。そんな中、米軍の偵察機がソ連上空を飛行するが高射砲に撃ち落とされる。米兵は捕らえられ、ソ連で拷問を受ける。またドイツのベルリンでは東西に分断され、ベルリンの壁が築かれる。共産圏が勢いのある頃・・あるアメリカ人の学生が東側に侵入して捕らえられる。そして主人公の弁護士に重大な任務が・・米兵とソ連スパイの交換だが、あくまで弁護士は学生を含め2対1の取引を要求。果してその結果は!?映画では東西冷戦時代の緊張感が・・ドイツの兵士に銃殺される市民など、ベルリンが東西に完全に分断されていった悲しい歴史を作品に観た。映画は公開日に観賞した・・
まだ紳士的だった冷戦。スピルバーグ版『大いなる幻影』
米ソ冷戦下での米国の交渉術・処世術をいまごろ見せられてもちょっと困るなぁと思いつつ鑑賞したスピルバーグ監督の新作『ブリッジ・オブ・スパイ』。観終わっての感想は、これはスピルバーグ版『大いなる幻影』ではありますまいか。ジャン・ルノワールのあの映画では、第一次大戦では敵同士であってもまだ紳士的だったといっていた。この映画でも、その雰囲気が漂ってきていました。
映画は二部構成。
第一部は、ソ連のスパイ容疑で逮捕されたルドルフ・アベルをトム・ハンクス扮演のジェームズ・ドノバンが、米国憲法の人権擁護の理念に沿って弁護するというもの。
第二部は、ソ連偵察中に囚われた米国軍パイロットと、ベルリン封鎖の際に東ドイツに拘束された米国人学生をあわせて、ルドルフ・アベルと交換するという、とてつもない交渉を東ベルリンでドノバンが行うというもの。
スピルバーグの演出は、少々もったりしているともいえるほど、重厚に構えていて、それでいてスリリング。
コーエン兄弟が一枚かんだ脚本のシニカルな笑い息抜きにして進めるだけの余裕も感じます。
素晴らしいのは冒頭。
アベルのスパイ活動と、保険の交渉をおこなっているドノバンとをカットバックでみせるあたり、語り口が上手く、ここで映画への期待感が増します。
トム・ハンクスも上手いが、無口で、風采の上がらない、冴えない初老男にしかみえないアベル役のマーク・ライランスが、すこぶる良い。そして、彼らはそれぞれ米国を信じ、ソ連に忠誠を尽くして、国を裏切ろうとはしない。
そこに、紳士的なもの、ふたりの間に友情に近い気持ちが芽生えるわけです。
しかし、冷戦下はまだ紳士的だったとはいえ、結末の橋の上で交換されたアベルの行く末を見つめるドノバンの遠景ショットには、「敵は敵、信用すべきものではない」とも暗示されており、かなり苦い味わいでもある。
冷戦時代の雰囲気をうまく演出
アメリカで見ました。冷戦時代の米露の雰囲気を見事に再現していると思います。
映画はまずニューヨークでスパイ活動をしているソビエト側のアベルという人間が逮捕されるところから始まります。ブルックリンを舞台にしていて、ブルックリンに古い車や昔の服を着たエキストラを配置して1960年代の雰囲気を演出。地下鉄については今でもクソ古いので、特に演出をせずとも古い雰囲気が出てました笑
さて、逮捕されたところから、トムハンクスが演じる弁護士が登場。利益にならないのに、被告人には平等に弁護を受ける権利があるとの考えのもとで、アベルの弁護を引き受けます。しかし、これにより家族に対する嫌がらせが起きます。弁護士であると共に家族人でもあるドノバンの苦悩したことでしょう。しかし、ここらへんの苦悩はややあっさり演出されていました。物語の中心は交渉にありますし、個人的には家族愛押し付けが多いアメリカ映画の中では割とあっさりしていて良かったように思います。
さて、アベルの裁判はとても手続保障なんてないひどいものでした。ここらへんの議論は割と憲法とか、それなりにアメリカの司法手続に関する議論が出てくるので、予備知識があるとより議論を楽しめるかと思います。
裁判終了後、アメリカ側のスパイがソ連に捕獲され、ドノバンがその人質の交換の役割を担います。ここから舞台はドイツに移りますが、当時のベルリンの壁建設時の異様な雰囲気、共産主義国独特の雰囲気をよく演出できていたと思います。
交渉は、特にひねったものはなかったですが、調べたら史実通りだったんですね。アベルが橋でドノバンのために、すぐに向こう岸に渡らなかったところは本作品のクライマックスです。
総じて良作でした。やや感情描写が弱いかなと思いますが、万人におすすめできます。
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