「ちはや降臨!」ちはやふる 上の句 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
ちはや降臨!
10年ひと昔!
今をもときめきまくっている俳優達のフレッシュな姿が映像に残っている素晴らしさ。
清水尋也、こんな役もやっていたのか。
すずちゃんもあどけなさが残り可愛い。
すずちゃん相手に百人一首に集中できる周りのみんなは素晴らしい。
今は遠くにいる友達、新との再会を夢見て、小学生の頃から大好きな競技かるたにのめり込んできたちはやと、小学生当時一緒にかるたをしていた太一、当時は対戦校にいた肉まんくんが同じ高校に集結!
呉服屋の娘で百年一首や和の風情に魅せられている奏ちゃんと、これまで友達もおらずガリ勉だった机くんに合わせて貰い、競技かるた部設立!
すずちゃん、チアダンでもこんな感じだったし、チアダンの福井弁は、本作で真剣佑演じる新が話しているなぁ。
ちはやは新との再会を信じているが、新には要介護の祖父がいて、自由に大会などに出られない。
永年優勝だった祖父は、自らを岩に例える。
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ
=流れの速い川が岩で割れても最後には会おうと思う
ちはやと新もきっとまた会える。
男女の垣根を超えて札を取り合う大会に備えて、体力作りしたり練習したり、青春を存分に映像化してある本作は、仕事に忙しかった売れっ子俳優達の青春経験にもなっていそうだ。
良い役ばかりの矢本春馬演じる肉まんくんにうっかり油断していたらうっかり、まだカルタ初心者で競合相手にうまく札が取れない机くんに強敵を当てて勝ち率を上げようと言い出した!
机くんのプライドズタズタ、よくない流れに遠慮して、対戦相手強豪のエース、ドS須藤に遠慮する千早だったが、太一が鼓舞し、覚醒。
スパーンと札を取りチームの流れを変える。
取れた札は、
もろともに あはれと思へ 山桜
花より外に 知る人もなし
一緒に慈しんでね山桜よ、この山奥で花の他に知り合いもなく、独りなのだから。
この札がスパーンと札を取れず自信をなくした机くんに当たる。
一緒に頑張ろうね!にこんなに適した札があるとは!
奏ちゃんの知識と解釈のもと、
競技かるたでは最初の文字しか気にしない百人一首の札の句の意味への理解を深めていく部員達。
中学生だった今までは経験した事がなかった感情も、友情や初恋などと重なり合って、句の情緒的理解が進んでいく。
日本人の持ち合わせる複雑で奥ゆかしく遠慮配慮から意味をひそませる言い回しは、千年前から健在で、千年前の人々の言葉遊びを現代の若者が心情理解し楽しめる。相手への敬意は欠かさず行う試合作法。
なんて素晴らしいんだ!
素晴らしい文化の醸成を映像で見ながら、登場人物達が句の言葉と友達との出来事をセットに思い出を積み重ねて記憶していく過程を目撃させて貰える。
そうかー、新も太一もちはやを好きなのか。
新がちはやの句だねと言ったのは、単なる「ちは」だけではない、知性ある秘めた告白。
千早ぶる 神代もきかず 龍田川
からくれなゐに 水くくるとは
神々の時代にも聞いた事がない、水が紅葉で真っ赤になるほどの龍田川=美しさ、それほどあなたの事を想うと赤く燃え上がる
太一は小学生当時から新同様ちはやを好きで、新に負けるところを見られたくないがために、新の眼鏡を隠したが、それでも負けた過去がある。
その時勝負の神様に見放された、青春賭けても新には勝てないと嘆く太一に、師匠は青春賭けてから言えといい、下記の句を送る。
このたびは 幣も取りあへず 手向山
紅葉の錦 神のまにまに
急な旅でお供物もないけれど紅葉を手向けます、どうぞ神のお召しのままに
すべき事を全てしたらあとは神のみぞ知ると任せる。
百人一首に限らず、全てにおいて言える事。
師匠のセンスは素晴らしい。
かるた好きに悪い人はいないとちはやが言う場面があるが、そうだろうと思う。