劇場公開日 2016年3月19日

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ちはやふる 上の句 : インタビュー

2016年3月18日更新
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広瀬すず×野村周平×真剣佑がつむぐ“競技かるた”にかける青春

数多くの漫画賞を受賞し、累計発行部数1600万部を突破する末次由紀氏の人気少女漫画を映画化した、2部作の前編「ちはやふる 上の句」が完成し、3月19日に公開を控えている。“競技かるた”という題材を青春群像劇として映像化するに際し、メガホンをとる小泉徳宏監督のもとに結集したのは人気、実力を兼ね備えたフレッシュな顔ぶれ。主要キャストに抜てきされた広瀬すず、野村周平、真剣佑に話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/根田拓也)

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「千早ふる 神代もきかず竜田川 から紅に水くぐるとは」。約1200年前、希代の歌人・在原業平が禁じられた恋の相手を思って詠んだとされる一句が、タイトルのもとになっている。だが、“はんなり”としたイメージとは裏腹に、競技かるたを知れば知るほどスポーツと形容せざるを得なくなる。それは、クランクイン前から練習を始めた広瀬ら3人にとっても、同じ心境だったようだ。

広瀬「経験者とそうでない人のフォーム、姿勢がまったく違うので、まずは先生のフォームを見ながら、形から入っていきました。それを体にすり込んでいかないと、どんどん軸がぶれていくんです。そして、スピード勝負の面もあるので、体重の乗せ方とか、千早のダイナミックなフォームとスピードにこだわってやらせて頂きました」

真剣佑「競技かるたって最初に聞いたとき、穏やかなイメージを抱いていました。でもそれとは真逆で、本当に競技という言葉が似合うんですよね。僕はまず100枚すべて覚えて、決まり字を覚え、自分の陣地、定位置とかを決めていきました。自分の得意な札、不得意な札、思い入れのある札もありますしね。やればやるほど積み重なっていくものもあるし、相手によって取り方も変わってくる。奥が深いなあと思いました」

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野村「僕はこの2人に比べると天才的な能力を持っている役ではなかったのですが、それでも経験者の方が見たときに『ちゃんとやっているな』と見えた方が、作品として良いに決まっていますから、そこは意識して徹底的にやりました。人間らしい部分を持っているのが(演じた)太一。感情移入はしやすかったです」

幼なじみの綾瀬千早(広瀬)、真島太一(野村)、綿谷新(真剣佑)は小学生時代、新に教わった「競技かるた」でいつも一緒に遊んでいた。新の競技かるたにかける情熱を通して、千早は夢を持つことの大切さを教わるが、そんな矢先に新は家庭の事情で福井へ引っ越してしまう。高校に入学した千早は、新に会いたい一心で「競技かるた部」創設を決意。高校で再会した太一とともに部員集めに奔走し、なんとか創部にこぎ着けた千早は、全国大会を目指して練習に励む。

冒頭のコメントにもあるように、キャスト陣の競技かるたを習得するための努力は、作品の根幹を揺るがしかねないということもあり、筆舌に尽くしがたいものがある。さらに、キャスティングで最も難航した新役に決まった真剣佑には、製作サイドから別のミッションが与えられた。

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というのも、小泉監督と日本テレビの北島直明プロデューサーは、初対面のときから「とにかくキラキラしている!」と目が離せない存在として、真剣佑に注目していた。オーディションでは実力を発揮できなかったが、2次オーディションで劇的な成長を見せつける。その伸びしろに賭けて、「地獄のトレーニング」と称した福井修行へ真剣佑を旅立たせた。リアルな福井弁をマスターするため短期間ながら現地でアルバイトをし、福井で名の知れたかるた協会「渚会」で2週間のトレーニングに打ち込む。

真剣佑「誰が地獄と言ったのか分からないのですが、僕は地獄とは思っていないんです。監督に衣装合わせのとき、『福井へ行って“もののあはれ”を探して来い』って言われたんです。『どういうことだろう……』と思ったんですが、監督からは『俺に聞かないで、自分で探して来てくれ』って(笑)。それがわかったかというと言葉で説明することは出来ないんですが、あの2週間があったからこそ綿谷新を演じることができたんだと思います。新がどういう街で暮らし、どういうものを見て、聞いて、感じたのかを感じる事が出来ましたから」

横で聞いていた2人は、対照的なリアクション。野村が「俺だったらおかしくなっちゃうよ。ずっと、かるたをやっているんでしょう?」と目を大きく見開く一方で、広瀬は撮影時に思いを馳せ「人一倍ストイックにやっていたもんね。世界が違うと思った」と納得顔だ。

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そんな広瀬も、ドラマの撮影があったのにもかかわらず練習に励み、スタッフからプレゼントされた“移動式畳”を愛用。クランクインする頃には膝や腕に水ぶくれやアザが出来ていたそうで、いかに本気で取り組んでいたかがうかがえる。だが、広瀬はどこまでも自然体で、猛特訓すら楽しんでいた節がある。

「みんなで一緒に練習することって、そんなに多くはなかったんです。撮影に入る頃には、個々で自然と素振りをするようになっていましたし、とにかく基礎的なことを教えてもらっていました。スピードは、やればやるほど速くなっていきますから。最後の方は本当に負けたくなくて、(札を)取られなくちゃいけないシーンではあるのですが、テストの時だけでも取ってやる! みたいな気持ちになっていました(笑)」

そして、対戦を終え全力を尽くした千早が、白目をむいて眠りこけるシーンも見どころのひとつといえる。当初は苦労した様子の広瀬だが、「最初はできなかったんですが、コツをつかんじゃいました! 終盤では、監督に『もうちょっと白い部分を少なくして』とか『やっぱり黒い部分を3分の1』とか言われても調節出来るようになっちゃいました」と変幻自在に操れるようにマスターしたようだ。

これには野村と真剣佑も最敬礼だ。「白目といえば、広瀬すずじゃないですか? あんな白目ができる女優は、広瀬すずしかいませんよ」(野村)、「ああいう千早がいてもいいなと思えますよね。たまに抜けた千早が画面に映ると和みますしね」(真剣佑)。

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千早を近くで見守る太一、遠くから見守る新。だが実際の3人は、とにかく仲が良い。最初に顔を合わせるまでに抱いていたイメージとは、随分と印象は変化したようだが……。

野村「マッケン(真剣佑)は天然というか、まだ日本の生活になじみ切れていないところがかわいいですね。さっきも、ずっと俺の楽屋にいるんですよ」
 広瀬「泊り込みで撮影しているときも、ずっと同じ部屋で寝ていたよね」
 野村「部屋代がもったいないよ、マッケン。ずっと俺の部屋にいるから」
 真剣佑「一緒にいたい気分だったんですよ。すずは人見知りだよね」
 広瀬「人見知りっていうのもあるんだけど、最初はひたすら人間観察をしていたんです。同世代の役者が集まるってどんな感じだろうと思って、ソワソワしながら見ていたのかも」
 広瀬&真剣佑「太一は……」
 野村「俺だって、『ちはや』くらいからだよ、こんなに明るくなったの」
 広瀬「お姉ちゃんから『多分あんまりしゃべらないよ』って言われていたんですが、ずっとしゃべっているし、踊っていた(笑)。『ちはや』の現場だからこその特別感があったのかもね」
 野村「座長にはすずがいるし、年上だからって無理にリーダーシップを発揮する必要はないって思ったんです。おかげで、すごくリラックスできました」

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3人が話し始めると、合いの手を入れることすらはばかられる。撮影現場を訪れたときにも3人の掛け合いを目にしていたが、謙遜しようと会話を牽引するのが野村であることは、誰の目にも明らかだ。矢継ぎ早に会話がポンポンと展開されていくなかで、話題は太一が千早を“おんぶ”するシーンへと着地。が、しかし、筆者が「壁ドンよりも、おじさん世代はおんぶの方がグッとくると思う」とこぼしたことで、思わぬ方向へと脱線していく。

野村「壁ドンってどうなんですかね」
 真剣佑「ドキドキするんですかね? あの良さが分からないんですよね」
 広瀬「太一に壁ドンされたら『うええ』ってなっちゃう(笑)」
 野村「すず、されたことある?」
 広瀬「ないなあ。もしも好きな人にされても『近い!』って思うだけかもしれない(笑)」
 野村「その点、おんぶは良かったよね」
 広瀬「好きな人の顔が真横にあるんだよ? それが一番ドキドキするし、いろんな人にとって一番なじむのが、おんぶかもしれないね」
 野村「でも、キュンってする意味がわからないんですよね」

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「20年後くらいに分かるかもしれませんね」と筆者が答えると、広瀬は「ナチュラルなところがいいんですよね」とニッコリ。野村が「すず、なんで分かるんだよ!」とツッコミを入れると、「わたし、なんか分かるよ」と切り返し、真剣佑と笑みを交し合っていた。後編「ちはやふる 下の句」では、“クイーン”と称される松岡茉優も本格的に登場し、ストーリーにどう絡んでくるのかにも注目が寄せられる。そして、この3人の天井知らずの成長ぶりからも目が離せそうにない。

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