孤独の暗殺者 スナイパーのレビュー・感想・評価
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生きていく上での空気抵抗
原題の直訳は、
The Resistance of the Air。
射撃の名選手と言っても、企業で働き、家庭もあるごく普通の民間人が、犯罪組織のスナイパーになるという話。
主人公Vincentの家庭は、かろうじて家族らしさを保っており、資金が足らずに完成しない、冷ややかな風が吹き抜ける建設中の自宅のようでした…。
家計は苦しく、妻とは倦怠期。歯医者と結婚した妹を羨ましがる妻の視線が痛い。
母は5歳の時に出て行った。
引き取った要介護の父は酒と女に財産の全てを使い果たしていた。
好色な上に気難しい父が原因で、今度は妻が娘を連れて出て行ってしまった…。
悩み以外ないような毎日で、唯一の救いは射撃。嫌なことを全て忘れて狙いを定め、無になれる瞬間。
父を施設に入れられたら、
自宅の建設が進んだら、
妻子は帰ってくるかも知れない。
言葉は少なめですが、生々しいほどリアルな日常の閉塞感が伝わってきました。Vincentを中心に、周囲から圧縮された空気が押し寄せて来るようです。彼が高額の報酬目当てに暗殺を引き受けるには充分過ぎる理由でした。
ただ、勧誘された時、普通はもう少し驚きそうなものではあります(^_^;)。
ひたすら耐え忍んでいたVincentが犯罪の世界に足を踏み入れた途端、圧迫感を跳ね除けて解き放たれていく欲求。しかし表の世界で生き生きしていたのも最初だけで、裏稼業の闇はどんどんとVincentの集中力と冷静さを飲み込んでいきます。
最初のターゲットの命を奪った同じ日に、父親が召されるというのは何とも皮肉。
派手さはなく、終始薄暗い色調でした。
燃えた家は元には戻れない暗示かと思いましたが、弱った一般人を巧妙に取り込む甘い罠から果たして抜け出せるのかどうか、結論は出さずに余白を持たせた感じでした。
普通の人が犯罪に巻き込まれる構図
射撃のメダリストがスナイパーとして犯罪組織に取り込まれ堕ちてゆく物語。
あらかじめ始まりがオチ(結末)となっているので話自体はそう引き込まれるものでもないが
フランス作品だけにシリアスな場面が淡々と進んでゆく。場面が映える音楽や派手な場面もほぼ皆無。
トーンが一定で、それだけに寒々とした雰囲気が続いてゆく。
まるで長編ドキュメント作品を見てるみたい。だが、ラストシーンは予想とは違い微かな希望が残る、監督の意図はここにあるのか。
悪銭身に付かず、勧善懲悪。
家族ある身なら犯罪に関わって危険にさらしてはいけない。
当たり前だが悪の道はここそこにある。
閉塞感が強く、酷く息苦しい作品。
突出した射撃技術を持つにも拘らず。
押しの弱い性格も相まって不遇の生活を送るヴァンサン。
予期せぬ事態が重なり八方塞となった彼の元に一人の男が訪れて或る依頼をする。
その依頼を受け入れた時からヴァンサンの人生が狂っていく。
ヴァンサンを中心に描かれる世界。
全編通して薄暗く、閉塞感が強く、酷く息苦しい。
彼の元に舞い込む厄介事は非常に理不尽で静かな怒りが満ちていく。
溜めに溜められた怒りが一つの形で帰着した時。
…起きている事態とは裏腹に一種の爽快感が。
しかし爽快感は長くは続く、踏み入れた闇に呑まれ堕ちていく姿に再び息苦しさを感じる。
思い返せば、終始息苦しさを感じる作品でした。
閉塞感が強く、酷く息苦しい本作。
薄暗く閉塞感が強い世界観は、映画「フォックスキャッチャー」を。
或る場面では映画「アメリカン・スナイパー」を彷彿。
決して派手ではないですが深く重く楽しめる作品だと思います。
オススメです。
堕ちて行く
説明や台詞は少ないが普通の人が堕ちて行く様がビシビシ伝わってきて、現実的ではないけれど、現実に身近なところでも起きる様な気分にされる。その後彼らがどうなるかを観せない終わりかたも重さが残り幅が拡がって良い。
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