劇場公開日 2016年5月28日

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「犯罪に歯止めをかける事ができない社会の恐怖」ヒメアノ~ル みじんコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0犯罪に歯止めをかける事ができない社会の恐怖

2016年5月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

個人的になかなかの力作だったと思います!

コーエン兄弟のような、オフビートコメディ要素と突発的に日常を破壊するバイオレンスが混在した、邦画では珍しいブラックユーモアー溢れる犯罪映画という印象でした。

<個人的に良かった点>

・森田剛の演技と劇安ヤンキーキャラが見事に合致

アイドルV6の森田剛が、朝からパチンコの列に並んでいるような、うだつの上がらない地方都市在住のヤンキーにしか見えません。 何をするのも『面倒くさそう』で ”心が無い”サイコキラー役がピッタリハマってました。
個人的には『十三人の刺客』の稲垣君を思い出す怪演ぶり、ジャニタレ侮れませんね~

・恐ろしい惨劇が起こっているんだけど不謹慎な笑いがわき上がる演出。

 MCアユムがバットで殴り殺されるシーンと佐津川愛美が後背位で攻められてるシーンをカットバックで見せる演出とか、襲った女性のパンツが剥ぎ取られて『どうなるのッ?』と前のめりになった次の瞬間にビニールシートが被さったマンションが映っている食い気味のスピード演出、あと食事中の殺人シーンとか、怖いんだけど何か笑ってしまう底意地の悪い演出が個人的に好みでした。

<個人的に残念だった点>

人が犯罪を犯す事の歯止めとして「法による刑罰」や「共同体の縛り」があるわけですが ”共同体からはみ出した人間”が『もう、俺死んでもかまわねーや』と開き直ってしまうと、まったく犯罪に歯止めをかける事ができず秩序が容易く崩壊してしまう… 今時の地方都市の凶悪犯罪感が描かれていて『これは怖くて面白いな!!』と途中までは思ったのですが…

<ここからは作品ラストに関する記述があります>

主人公森田が何故あんな凶行を起こしてしまったのか?
彼の過去を描いてしまったが故に、彼の存在が ”僕たちとは違う特別な不幸に見舞われてしまったが故に生まれたモンスター” として描かれてしまい、僕らが安全圏から眺めて見ていられるエンタテイメント作品になってしまったのは個人的には『惜しいな〜!』といった感じでした。(これは冷たい熱帯魚を観た時も思ったよなぁ…)

ただこの映画を評価されている人の多くの方が その部分を褒められているようなので、そこは好みの問題なのだろうな…と、

<結論>

怖くてドキドキできて最後にはほろ苦く切なくなれる…
そんな犯罪映画に後味の悪さを求めない人にお薦めの作品だと思います!

犯罪映画に後味の悪さを求める人には井筒 和幸監督の『ヒーローショー』が <個人的に> 超★おすすめです!!

みじんコ