「タイトルをドーンと出す瞬間が、絶妙にうまい。」ヒメアノ~ル 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルをドーンと出す瞬間が、絶妙にうまい。
絶望の先にある虚無感は、それまでの記憶をなかったものに変え、人格をも変えた。その結果が、今の森田。
嫌な記憶と一緒に楽しかった記憶までも封印し、いつの間にか万能であるかのような錯覚に陥るのだから、恐いものなどないよなあ。
躊躇なく犯す、感情のない殺人ほど、狂気を感じるものはないと戦慄を覚えた。
森田にとって殺人は、セックスをしたい欲望と同じくらい変哲もない行為だ。彼に良心の呵責が芽生えることがないのは当然として、厄介なことにエクスタシーさえも感じない。性欲と殺人と食欲が、同等に並んでいるかのようなカレーのシーンには、役者森田剛の力量を目の当たりにした思いだった。
ラストシーン。森田を弁護する気はさらさらないが、悲しさと優しさの余韻を残してもらった気分。
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