「ドリーミーなDT映画」ラ・ラ・ランド kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
ドリーミーなDT映画
オープニングを始め、ミュージカルシーンはおしなべて魅力的で、音楽的・映像的には最高の映画でした。
ストーリーは夢見る若い2人が出会って恋して別れるといった、普遍的に共感を得やすいタイプのもの。しかし、主人公の2人が社会的にルーズで甘っちょろく、セブに至っては過度に偏狭なところがあり、彼らに感情移入をまったくできません。なので、物語の前半はあまり乗れませんでした。
正直なところ物語シーンは退屈で、「早くミュージカルシーンになんねぇかな」と思って観ていました。
しかし…セブが金を貯めるために好きでもない音楽性のバンドに加入したあたりから、これはもしかして童貞野郎の失恋あるある映画(しかも男から恋をブッ壊すパターン)なのでは、と思うようになり、観ていて古傷をえぐられるような痛さを感じるようになってしまった。
ストレスフルな仕事をしていて余裕がなくなって関係が少しギクシャクしてきたので、サプライズパーティーのようなイベントを頑張って盛り上げて改善を図ろうとして事故るとか、黒歴史を見ているようで正直ツラかった。
セブの「優越感のために付き合ってるんだろ」発言の後のエマ・ストーンの異常にリアルな表情…恋のマジック終わったな感が半端なさ過ぎて痛い。
逆に言えば、それまではぼんやりした話だったが、この辺から急にリアルになったと言える。恋に不慣れな男が大切な相手との関係をひとりよがりで壊していくリアルさはかなりのもの。全般的にリアリズムゼロの物語ですが、失恋パートだけは生々しい。
2人の世界だけを描いた閉じられた映画でもあるため、『思春期・童貞・妄想』というキーワードを連想しました。個人的には大好きなワードではあるんですが、本作は腑に落ちなかった。
セブの挫折は良かったけど、5年後にワープするエンディングがいただけない。成功が描かれているが、キャスト2人の造形に成功への説得力がまるでないため、とってつけたような印象が否めず、白けてしまった。お前らどこで成長したの?って感じ。
誰も観てないようなひとり芝居を見初められてデビューって、それマジで言ってんの?と思いましたよ。
エンディングのミアの妄想より、こっちの方がよっぽど妄想だよな、なんて感じました。
華やかなキャストや音楽が醸し出すムードにコーティングされているけど、デミアン・チャゼルの童貞マインド大爆発の映画だったように思いました。
確かに観応えはあったし楽しめたのですが、奥底の部分でこの作品(いや、デミアン・チャゼルその人かな)とは決定的に合わなかったと実感。一言で言えば嫌いな一本です。
(書き直し感想文)