「最後のシーンの解釈、自分は好きです」イット・フォローズ かげろうさんの映画レビュー(感想・評価)
最後のシーンの解釈、自分は好きです
郊外で閉塞な日常を送る彼女らは常に退屈し、いつも同じ面子で集まっては同じ遊びの繰り返し。
地方でありがちな性に対する好奇心も日常レベルで描かれています(この辺り、監督の処女作と通じてるかも)。
そんな好奇心から取ったある行動が原因で、正体不明の事象に命を脅かされる。
それは肉体関係を結んだ相手にスイッチして乗り移った怨霊(フォローズ)が、命を奪うまで追いかけてくるという恐怖。怨霊が命を奪った後はまた前憑依者に戻り命を狙う。つまり、全ての憑依対象者を殺すまで追い続けるという執念深い悪霊だった。
ただし、追うのはじわじわと歩行でのみで被憑依者にしか見えない。
あれは日本で言うところの色情憑依霊かな?劇中の登場の仕方にその帰来を感じます。
霊障が強く、しかもパワー型。だけど反撃した拳銃の弾も当たるw ただ、ダメージは追っても不死身のようです。
主人公のジェイはフォローズに何度も襲われてるのに、閉じこもるしかできない頭弱めのキャラ設定なので昔のホラー映画のイライラさを思い出します。
最初の彼の忠告もほとんど頭に入ってなかったみたいで、一緒に庇ってくれる友人達にもなかなか伝えません。そのため一度は髪の毛をつかまれ&吹き飛ばされ等しましたし、常に逃げ場を確保しろと言われたのに、いつも建物の中に逃げ込みます。
ジェイを心配してた向かいの家の女好きな兄ちゃん(憑依を受ける同意の元で肉体関係をむすんだ)も助けきれず。
映画の印象
最初イギリス人が作った映画かと思ったほど印象に残るフレームワークと空間演出が美しく感じました。ジュブナイルにも通じる、余韻が残るカット割です。
楽曲がアメリカっぽくなく静かで、幻想的で、自分好み。冒頭のジェイの日常芝居シーンは金子秀介監督の「1999年の夏休み」のようでした。
フォローズに追われる緊張感を出すために、何もないところにフォローズが現れるかのような視線の誘導を常に仕掛けていることが秀逸ですね。
伏線も冒頭からそこはかとなく張られています(ところどころ劇中で登場人物たちが気付かないフォローズが見切れてました)。
ただ、スクールプールのバトルシーンはアイデアに脚本がついていけてませんでした。あれは何だったのか。
ジェイ役のマイカ・モンローもかわいいですね、どこかで見た覚えがありましたが、「インディペンデンス・デイ リサージェンス」に元大統領の娘役で出ていました。
さて、色々不評される最後のシーンですが、私はこう解釈しました。
常に怯えながら降り掛かる悲劇に疲れ果てたジェイは、いつも心配し本気で想ってくれているポールを受け入れ、やっと等身大の恋人同士になることができました。
しかし、結局フォローズは最後のシーンに現れ、二人を見つけてしまいました。
手をつないだ二人の背後から男性の姿で近づいてきます、安堵と一緒に本当の恋に目覚めたジェイがポールの手を握り返したその直後に。
ポールは予想時間通り現れたフォローズがすぐ後ろに迫っていることに気づいていますが、逃げません。ポールにとっては望んでいたジェイとの幸せな時間。そして二人の後ろ姿に近所の子供たちの笑い声が重なり暗転。
キーポイントは、ジェイと結ばれたポールがフォローズを除ける為に娼婦を買いに出掛けたシーンがありましたが、ポールは娼婦を買わず(他の女を抱けないまま)ジェイの元に帰ってきたと考えます。
そして、その時にはポールはジェイと心中することを秘かに決意していたのだと思います。それはポールにとって、彼の内向きな恋と、念願のそれが手に入った事で無くし難いものになったから。
友人のお見舞いにいった友人の病室で彼は終焉を見越して心が落ち着いたのか、フォローズが到達する時刻を知っていたためか、落ち着き寝入っていました。その時ネイは何か暗示的な物語を朗読していました。
そう捉えると、この作品のテーマは、主人公のジョイの女の子としての成長&ポールの終末的純愛だと思うのですが、いかがでしょうか。
シナリオは雑ですけど、演出&編集&プーチン似のポールが魅せた好作品でした。
追伸:結局、フォローズはジョイ&ポールも倒して、最初の彼氏のところに戻るんでしょうけど、彼が一番頭がよく知恵も行動力もあるので、何とかしてくれそうです。