劇場公開日 2016年1月8日

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イット・フォローズ : 映画評論・批評

2016年1月5日更新

2016年1月8日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

背筋を凍りつかせ、胸をざわめかせる、死とセックスのオブセッション

クエンティン・タランティーノが「こんな設定のホラーは観たことがない!」と叫んだという本作は、あっと驚くオリジナリティが次々とあふれ出すアメリカ映画である。“セックスを媒介に感染する恐怖”などと書くとコメディかと思われそうだが、まったくそうではない。付き合い始めたばかりの青年とカーセックスを交わした途端、19歳の美少女ジェイの人生が一変する。突然現れた邪悪な何かは人間の姿をしているが明らかに生者ではなく、全裸の女や異形の巨人など老若男女さまざまに外見を変え、執拗にジェイにつきまとってくる。超自然的な幽霊の一種なのだろうが、かつて観たことのない新種ゆえに、邪悪な“It”=“それ”としか言いようがない。

ホラー映画の本質的な怖さは、吸血鬼やゾンビにがぶりと噛まれる瞬間よりも、人智の及ばぬバケモノがじわじわとこちらに迫ってくるシークエンスにある。作り手は重々承知の上で“それ”がのっそりと歩き、しかし確実にまっすぐにじり寄ってくる距離感と時間のサスペンスを、心の準備さえ整わない観客に生々しく体感させる。しかも“それ”は、のどかに風がそよぎ、鳥がさえずる大学構内や浜辺に所構わず現れる。“それ”の正体やルーツは最後まで謎のまま。荒唐無稽な設定をあえて理由付けせず、極めて高度かつ大胆な演出力で成立させた新鋭デヴィッド・ロバート・ミッチェルの才能に舌を巻く。

そして本作の最大のオリジナリティは、経済破綻の街デトロイトの近郊でオールロケを行った映像の空気感にある。緩やかなパンやズームを多用するカメラは、ジェイと気の置けない友人たちが郊外の住宅街でたあいなく戯れ合う姿をふわふわと映し出す。そんな若者たちの日常を侵食する“死”と“性”のオブセッションは、仲間内の密かな恋心や道徳的な後ろめたさまでも呼び覚ましてくる。“それ”の戦慄が忍び寄るなか、スクリーンに揺らめく切なさ、憂鬱さ、甘酸っぱさ。まるでひと夏のセクシュアルな通過儀礼を描く青春インディーズのように、この恐怖映画には魅惑的なまでにみずみずしいエモーションが鼓動し、私たちの背筋と胸を震わせ続けるのだ。

高橋諭治

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