「清涼感」人生の約束 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
清涼感
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急成長したベンチャー企業、経営方針の相違で袂を分かつ親友の話はいかにもありそうだ。
二人の間に何があったか、肝心の友は回想シーンでも顔を見せないし多くを語らない、描かれなかったドラマは所縁の人たちの話で紡いでゆくだけだ。
まるで小説を読むように観客の想像性に委ねてストーリーが展開してゆく、芸術性は高いがドイツ表現派の映画のように難解でないところが好感が持てる。
柄本さん演じる隣町の町会長はかっての自分と同じと気づかせてくれる、友の死が無ければ会うことも無かった不思議な巡り合わせだ。熾烈な企業競争の溢れる都会と泥臭い生活感の漂う田舎の祭りを対比して何か大切なものを忘れちゃいませんかと問いかけてくる、いかにも昭和の日本人の美学かもしれない。嫌味にならないのはキャスティングの妙もあるだろう、傲慢でも繊細さを併せ持つ主人公は竹之内豊さんでなければ演じられなかったろう、忘れ形見の少女が新人なのも無垢に感じられる。江口洋介さんがまるでイチローにしか見えないのは可笑しかった、ビートたけしの刑事は「点と線」がらみの友情出演だろう、チョイ役だがおいしいところを持ってゆくのはちょっとズルい。西田さんも「池中玄太」での縁だろうテレビドラマの巨匠、石橋冠さんの映画初監督作品ということで芸達者や個性派俳優陣が脇を固めているので観ているだけでわくわくする。観終わって久々の清涼感のある力作でした。
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